空き家が資産に…城下町ホテルが建築賞 伊賀の古民家など活用
同賞は中部建築賞協議会が主催する。「KOURAI棟」は延べ面積2000平方メートル未満の物件が対象の部門で入賞した。同じ部門に9県から28件の応募があり、入賞は4件だった。
「KOURAI棟」は20年11月、オープンした。元は町家の「広部邸」。江戸時代末から大正時代に建築された母屋と大小の蔵の3棟が建つ。母屋の通りに面した側に組みひも店が入居している他は、空き家だった。
空き家の活用も兼ねて市も出資する「NOTE伊賀上野」が土地、建物を購入。魅力のある組みひも店は残してホテルに改修する施主になった。
同社が開いた説明会に名古屋市から伊賀市上林に移住していた武保学さん(40)=1級建築士事務所「きりん」代表=が参加、設計を担当することになった。施工も説明会に参加した業者が担った。中部建築賞は施主、設計、施工いずれも表彰される。
武保さんは既存の建物と「通り土間」、中庭の空間を生かし、母屋、小さな蔵、大きな蔵をそれぞれ客室にした。母屋部分の客室はガラス製瓦などを用い、「昭和のリフォーム」で撤去される前の囲炉裏(いろり)や煙抜きがあった時代の光の入り方に近づけた。
小さな蔵の客室は2階の寝室に迫力のある梁(はり)をそのまま残した。大きな蔵の客室は、複数家族の利用を想定して吹き抜けの大空間リビングと寝室二つを設けた。3室とも浴室と庭に面した涼み台がある。
受賞報告に市役所を訪れた武保さんは「元々の環境を生かし、後世に残せるものにしたかった。細かいところにも気を配り丁寧につくったところが評価されたと思う」と話した。岡本栄市長は「(空き家という)負の遺産が未来につながる資産に変わった」と述べた。
城下町ホテルは「KOURAI棟」と同時開業の「KANMURI(冠)棟」(上野相生町)、21年5月オープンの「MITAKE(御嶽)棟」(上野幸坂町)の三つがある。これまでに合わせて3000人以上が宿泊し、「KOURAI棟」が一番人気という。