「寝たきり歌人」逝く 介助者たちがささげる大合唱
◇出版記念のはずが追悼上映会に
6月12日、横浜市栄区のあーすぷらざ。「ごちゃまぜ映画会 映画と短歌とヒップホップ」と題したイベントが開かれ、遠藤さんをしのんで約100人が集まった。
こんなはずではなかった。昨年12月に初の歌集「いのちゆいのちへ」(七月堂)が出版され、その記念として計画された上映会。コロナ禍の延期を経て実現し、遠藤さんも参加を楽しみにしていた。
上映された映画「えんとこの歌 寝たきり歌人・遠藤滋」は2019年に公開され、毎日映画コンクール・ドキュメンタリー映画賞などを受賞している。
◇「えんとこ」と呼ばれた居場所
遠藤さんは1947年に仮死状態で生まれ、命はとりとめたが、脳性まひと診断された。大学時代はまだ学生運動にも参加しており、伊勢監督とは反戦デモで知り合った。
卒業後は母校の養護学校で教壇にも立ったが、やがて歩けなくなって退職。自らを介助するグループを設立し、東京都世田谷区のマンションで寝たきり生活を始める。伊勢監督がその様子を3年にわたって撮影した前作「えんとこ」が完成したのは、1999年だった。
「遠藤さんのいる所」「縁のある所」などの意味を持つ「えんとこ」。介助者には行政から時給が支払われるが、重い障害と病気を持つ遠藤さんの介助は、3交代24時間体制で気が抜けない。公募しても常に人手不足だった。
ただ、介助の仕事さえ理解すれば年齢、性別、国籍など一切問わない。学生、フリーター、留学生、主婦などさまざまな人たちがやって来て、35年間で2000人を超えた。