内村光良さん、映画「夏空ダンス」に込めた思い…九州豪雨からの復興「目の前のことから」
人吉市では、豪雨で中心市街地が広範囲で浸水し、災害関連死を含む21人が亡くなった。インタビューは14日、市内で行われ、内村さんは「町が水没している映像はショックで、知らない町を見ているようだった」と振り返った。直後は自身も含めて復旧で手いっぱいだったが、時間の経過とともに変わっていく街の風景を残したいとの思いが募ったという。
ヒロインには、テレビ番組で出会ったダンスチームのメンバー・島雄こなつさんを抜てきした。「とてもダンスがうまく、この子が地元で踊ったら絵になると思って脚本を書いた。高校時代まで過ごした場所で青春映画を撮りたいという考えともかみ合った」と語る。
青井阿蘇神社や球磨川、仮設商店街に街を見下ろす村山公園――。作品の核といえるダンスシーンには、地元の人々になじみ深い場所が数多く登場する。花火大会のシーンでは、エキストラとして多くの地元住民が参加した。「みんなが思い思いの浴衣を着て参加してくれたし、30年ぶりに再会した同級生もいた。自分が慣れ親しんだ場所で撮影できて良かったし、ありがたかった」という。
一方、遮断機がいまだに倒れたままの線路や空き地が目立つ中心市街地、店舗を失ったラーメン店の店主など、豪雨災害の現実にもカメラを向けた。「あまりに悲惨なものになるとドキュメンタリーになる」と説明し、風景を中心にぎりぎりのところで表現するように苦心したという。
豪雨からまもなく3年となる。「帰るたびに地元の景色が変わっていてうれしい。できることをやり、立て直している皆さんはすばらしいと思う」と内村さん。「急に道が開けるものではない。目の前のできることをやっていくことが大事だというメッセージを込めた。多くの人に見てもらいたい」と呼びかけた。