映画のような旅、楽しんで 「ウェス・アンダーソンすぎる風景展」開催
◆「ぽい写真」が大人気
米国の映画監督、ウェス・アンダーソン(53)の代表作といえば、「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」や「グランド・ブダペスト・ホテル」「犬ヶ島」などが挙がるだろう。独創的なストーリー展開や毒気のあるユーモア、徹底的に作り込んだ映像美などで、熱狂的ファンも多い。とはいえアンダーソン監督は本展と直接的に何の関係もない。
発端は、米ニューヨーク在住の同監督のファンが2017年に立ち上げたインスタグラムのアカウント、「Accidentally Wes Anderson(AWA)」。つまり、世界中から集めた「はからずもウェス・アンダーソンっぽい」風景写真(もちろん撮影者の許可ありき)を媒介に交流するオンライン上のコミュニティーで、フォロワー数は現在177万人以上。投稿作を集めた書籍も米国でベストセラーとなり、日本を含む9カ国で翻訳出版された。こうした盛り上がりの中、「いっそAWAを、旅をテーマにした展覧会として見せたらどうか」と韓国で企画されたのが本展だ。
◆世界から300点超厳選
AWAの投稿画像から300点余りを展示。「ウェス・アンダーソンすぎる風景」の特徴として、日本展を担当したBunkamuraザ・ミュージアム学芸員の岡田由里さんは、「左右対称」「ピンクやターコイズブルーなどのパステルカラー」「装飾性」を挙げる。山小屋や海の灯台、駅、ホテルやプール…と世界のあらゆる場所が、おしゃれでノスタルジックな映画の一場面のように切り取られている。
乗り物の写真を集めたゾーンは、3兄弟がインドを旅する映画「ダージリン急行」を想起させるし、クラシックホテルのロビーのような展示空間は「グランド・ブダペスト・ホテル」のよう。撮影場所など説明も掲示されているので旅の参考になるだろう。
◆疑似体験を楽しんで
本展を企画した韓国「MEDIA&ART」社のチ・ソンウク代表は「単なる作品展示ではなく、旅を疑似体験できる構成にした。特に韓国での開催時期はコロナ禍で移動制限もあり、若者を中心に旅への渇望感もあった。過去の旅を思い出したり、次なる旅へと想像を膨らませたりできたのが人気を博した理由の一つ」と分析。日本巡回について「特定の芸術家ではなく『旅』がテーマなので、幅広く楽しんでもらえると思う。展覧会から持ち帰ったインスピレーションを、現実のものにしてほしい。ぜひ旅に出てください」と呼びかけた。
5月26日まで、無休。詳細は公式サイト(www.awa2023.jp)。(黒沢綾子)