クラヴィコードがひらく音、内田輝『Moj』リリース。清水寺よりツアーが始まる
クラヴィコードは14世紀頃に生まれたといわれ、ピアノの原型となった木製の鍵盤楽器。古楽器というとチェンバロをイメージするかもしれないが、クラヴィコードはもっと小型で(机の上に置けるものもあったり)奏でる音もずっと小さい。人の声よりも小さいという。ヴィブラートもかかる、その繊細で多彩な音色は、バッハやモーツァルトをはじめ、音楽家たちに愛されてきた。
2021年、内田は京都・音羽山清水寺のプロジェクト「FEEL KIYOMIZUDERA」で、改修工事にともない、役目を終えた本堂の舞台板からクラヴィコードを制作し、坂本美雨らと奉納演奏を行う。1200年以上も前から在る場所で、虫の声、クラヴィコードの音色、歌声、全てが入り混じった。
本作タイトル『Moj』はペルシア語で「波」を意味するという。1枚目はピアノをメインとした7曲、2枚目はクラヴィコードと自然環境音で構成した組曲を収録。全13曲のアルバムとなる。
そして5月13日(土)のCD発売とともに、クラヴィコードとピアノの演奏を行うツアーが始まる。京都「清水寺」からスタートし、6月10日(土)には806年創建の福井「明通寺」、7月29日(土)にはイサム・ノグチ設計で知られる札幌・モエレ沼公園のガラスのピラミッド「HIDAMARI」へと続く。
クラヴィコートについて、「この楽器の背景には、見えないものに心を寄せ、祈る心と共にあろうとした人々の歴史があるのではないか、と思うのです。
指先ではじかれた弦の微細な震え。そのごく小さな音に身体を寄せると、無数の音の存在に気づき、耳がひらかれてゆきます。」とコメントを寄せている。
そこできこえる音に、ただ心を向けていく。広がる音の波に身体をゆだねる感覚は、時間や時代を超えて、聴くことのプリミティブな喜びにつながっていく。ぜひ演奏会にも足を運んでほしい。