結局のところ、吉増剛造とは何者なのか 詩人からの応答を聞け!
入口に入るとすぐに、ショーケースに大きく飾られた詩篇が目に入る。最果タヒ、マーサ・ナカムラ、松浦寿樹、三浦雅士といった4人の詩人たちが吉増剛造作品をそれぞれ選び、言葉を寄せる。そして詩篇に書き込むかたちで、吉増自身がそれに答える。たとえば『出発』という詩の冒頭にはこのような応答がなされた。
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ジーナ・ロロブリジダと結婚する夢は消えた
彼女はインポをきらうだろう
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脚注(フットノート)とはいえ、1961年、二十二才のときに、この恥かしさが残ります。この2行から書きはじめて、旅出? いや、蒸発をした、困った想は、まだ傍らに坐っている気がいたします。(二〇二五・五・二十五)ジーナももう亡くなったのにさ、…
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『唖者の家へ』に対してはこうだ。
しずかに、岸辺は、河の女神に、ささやくように、訊ねた。(麗しい、……)。
木の根が、樹下の、(……、)廊下を、二、三歩、……歩けるようになった日に。響きをきいて、縁の蟻が一匹、小石の隅で、休ムのがみえた。
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幾億光年の時の丘隆も木陰にほっとかがやくようでした。
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作者の孤独と異様なほどの孤心が下を見て俯いているのが判ります……だから、こんな、途方もない特例が想像されていた。
4人それぞれの選詩によって、詩人の言葉は自身の過去に潜っていく。その深度によって、また新しい言葉が引き出されていく。