入手困難! 時計界のピカソが作ったオーデマ ピゲの《ロイヤル オーク》|高木教雄の名作時計デザインの秘密
今最も入手困難な、オーデマ ピゲの《ロイヤル オーク》。外装のパーツ点数が多く品質管理を徹底しているから、量産が困難だそう。さて、その初代のブレスレット部分はいくつのパーツから成っていたでしょうか?
1. 54個
2. 154個
3. 504個
正解は2!
154個です。
上の写真にある1972年に誕生した初代ロイヤル オークは、ケースとブレスレットの一体感を考察した最初期のモデルの1つであった。そしてケース側のブレスレットとの接合部、ラグをソリッド状の3つ脚として強く下側に曲げ、かつブレスレットを八角形ケースの上下両サイドの辺から連なるように滑らかにテーパードさせた。こうすることで、ブレスレットの表面と側面にケースとの連続性を創出したのだ。ブレスレットがテーパードしているから、上下に2つずつの切りかけを持つ横長のリンクも、それをつなぐオーバル状のリンクも、個々にサイズが異なり、結果、各リンクを留めるピンやビスも含め、コマ詰めしていな状態では計154個ものパーツが必要となった。
ケースとブレスレットとの完全統合化に加え、初代ロイヤル オークを特徴づけるビス留めした八角形ベゼルやフラットなケース、縦横に溝が交錯するグランドタペストリー装飾のダイヤルは、後に多くの他社が手本とした。
その生みの親は、時計デザイナーの先駆者ジェラルド・ジェンタだ。オーデマ ピゲから新たなステンレススティール(SS)製スポーツウォッチのデザインを依頼された彼は、自らをホテルに缶詰めにし、一晩でスケッチを描き上げたという。最も特徴的なベゼルの造形は、ジェンタ曰く「子どもの頃に見た、8本のボルトが付いた潜水用安全ヘルメットがモチーフ」。そのベゼルを留めるビスのドライバー溝は、スケッチとは異なり、ベゼルの内縁に完璧に添うようにオーデマ ピゲの技術者によって整えられている。