松山智一の日本初となる美術館個展。「雪月花のとき」が弘前れんが倉庫美術館で開催へ
弘前れんが倉庫美術館にて開催される。
松山は、鮮やかな色彩と精緻な描線による絵画や、大規模なパブリック・アートとしての彫刻など、大胆さと繊細さをあわせ持った作品で知られている。その作品には、日本や中国、ヨーロッパなどの伝統的な絵画からの引用や、ファッション誌の切り抜き、実在する消費社会の生産物や日常生活で慣れ親しんだ商品やロゴなど、様々なイメージのサンプリングが描かれており、複雑に組み合わされた大量のイメージ群は、現代社会に生きる私たち自身を取り巻くものでありながら、鑑賞者の心の奥底に蓄積された記憶の束がかたちを持って現れたようなものでもある。
本展は、2009年にニューヨークのギャラリーで開催された松山の初個展から14年を経て、年々活動の幅を広げながら精力的に作品発表を続けるその日本の美術館では初めての個展。総展示面積1200平米を超える弘前れんが倉庫美術館では、松山がコロナ禍を前後する時期に制作した近作と本展で初めて発表される新作を中心に、アーティストとしての進化と深化の過程を紹介する。
初公開の新作9点を含む日本初公開作品23点に加え、近年の絵画や彫刻、計30点が展示。出品作品には、松山がコロナ禍で初めて、遠隔でスタッフたちとの制作を試みた《Cluster
2020》(2020)や、ひとりで制作した《Broken Train Pick
Me》(2020)など、コロナ禍を通じて松山が創作活動の意味を問い続けた近年の作品群や、ミュージシャンのゆずからの呼びかけで実現したコラボレーションによる《People
With People》(2021)などが含まれている。
新作のなかでは、日本初公開となる極彩色の立体作品2点《Mother Other》《This is What It Feels Like
ED.2》(いずれも2023)が出品。嵌玉眼(かんぎょくがん)や京都の截金(きりかね)職人による截金文様などの伝統技法と、FRP
にポリウレタン塗装という、新旧の彫刻技法が融合されることで生まれた作品だ。加えて、洋の東⻄や時代を超える多種多様なイメージ群のコラージュから生まれた緻密な絵画や、パブリック・アートとして屋外設置されることも多いステンレス・スチール製の立体作品といった松山の代表的な作品も展示される。
また本展では、普段目にすることのできない、松山の制作過程で引用された資料やスケッチなども紹介され、その作品世界の一端を解き明かす。代表作から新作までを通じ、松山の活動を一望できる機会をお見逃しなく。