「もっとヘタになりたい」。『美術手帖』10月号は画家・五木田智央に迫る大特集
五木田の絵画制作の原点は、日本の美術教育ではなく、自ら浴びるように享受した1970年代~90年代のミックスカルチャーにある。ハイアートの外側を走り続け、気がつけば日本を代表する画家のひとりとなっていた彼は、これまで何を考え、どのように絵を描き続けてきたのか。この特集では、「もっとヘタになりたい」と語る、五木田の絵画はもちろんのこと、それらを生み出す文化的コンテクストにも焦点を当て、彼の絵画構築の方法や創作の原点に迫る。
巻頭インタビューでは、絵における「ヘタうま」の魅力から、自らが画面のなかに生み出す「形」について、そして子供の絵から受ける衝撃の話まで、「ヘタ」を愛し制作の自由を求める五木田にとっての絵画論を展開。絵の説明を避けてきた五木田の絵画を、できる限り解説する記事「『コンセプト』なき絵画制作の方法論」では、ネタ元となるスクラップ・ブック、人物を描く理由、形を生み出す方法論やシンプルな技法など様々な角度から、五木田の絵画制作の方法に迫るものだ。
本特集でさらに注目したいのは、五木田を取り巻く周辺の人々による言葉。先輩であり恩人でもある画家・角田純との対談や、五木田と関わりのある音楽家のジム・オルークやテイ・トウワ、精神分析医で多くの作家論を執筆するジェイミーソン・ウェブスターへのインタビュー、TOGAの古田泰子ら旧知の仲の6名が集まったアトリエでの飲み会レポートなどが収録。さらに佐々木敦らによる五木田の作家像を深堀りする2本の論考なども掲載されており、現時点における五木田智央大全とも言える内容となっている。
第二特集は、ルアンルパが芸術監督を務める「ドクメンタ15」にフォーカス。「反ユダヤ主義」とされる作品が問題となり大きな注目を集めるドクメンタ15の様子を、ベルリン在住の美術ジャーナリストが現地レポートでお届けする。