マリー・クワントの軌跡を辿るドキュメンタリー映画が公開に!
ミニスカートの女王として知られるマリー・クワントは、20世紀でもっとも影響力のあるデザイナーのひとり。1955年にチェルシーに構えたブティック〈バザー〉を皮切りに、世界的ファッション帝国を築き上げたマリーの成功の軌跡を辿るドキュメンタリーから浮かび上がるのは、デザイナー自身の意外な側面やファッションと社会活動の連動だ。
幼い頃からおしゃれが大好きで、3歳にしてすでに自身の魅力を引き立てる服選びを始めていたマリー。ゴールドスミス大学で美術を専攻した後に高級帽子店でお針子として働き始めたが、「侯爵夫人みたいなファッションは嫌」と退職。後に夫となるアレキサンダー・プランケット・グリーンと実業家・アーチー・マクネアの協力で、ブティック〈バザー〉をオープンする。
デザイナーとなったマリーはミニスカートやエプロンドレス、タイツといった若い女性のための革新的ファッションを次々と世に送り出し、オーククチュール・ファッションとは一線を画したモードの世界を作り上げていく。時代は60年代、ストリート発の若者文化・スウィンギング・ロンドンが世界を席巻。天才的な嗅覚で広報戦略を練る夫・アレキサンダーや広い人脈を持つマクネア、そしてマリーの創造性は世界を魅了していく。
監督のセイディ・フロストはファッショニスタとしても有名な女優で、本作で監督デビュー。マリー自身のインタビュー映像や彼女と家族ぐるみの友人・ジャスパー・コンラン、『VOGUE UK』編集長・エドワード・エニンフルやファッション研究家・テリー・ニューマンらがパイオニア精神に富んだマリーの功績や文化背景を分析するドキュメンタリー映像はマリーへのリスペクトに満ちている。
映画では、カミラ・ラザフォードが演じるマリーのスケッチ映像やファッション史的に貴重な写真や映像にさまざまな人の証言をかぶせる構成や音楽の使い方にもフロストのセンスが光る。また、滅多にインタビューに応じないケイト・モスやヴィヴァン・ウェストウッドの貴重な発言が挿入されているのも、フロスト監督の人脈あってこそだ。