『瀬戸内国際芸術祭2022』春会期スタート! 春うららかなアートの旅へ。
2010年に始まった『瀬戸内国際芸術祭』。5回目の今回も新作が多数登場、瀬戸内の海とともに楽しませてくれる。会期は前回同様、春・夏・秋の3回に分けて開催されることになった。春会期での新作が多く登場しているのは女木島、小豆島、沙弥島など。特に沙弥島は、大半の作品が春会期のみの公開となる。
沙弥島はもともと島だったが、埋め立てによって本州と地続きとなった土地。瀬戸内海には逆に数千年前は地続きだったけれど今は海で隔てられて島になってしまった場所もある。ナウマン象など古代の生物の化石が出土することも。近くの坂出の出身地である南条嘉毅は、そんな瀬戸内の長い歴史を1軒の家に閉じ込めたような作品を作った。
室内には水がたたえられ、映像が投影されて近くの五色台など瀬戸内海の海と山を凝縮したような景色が広がる。舞台となった家はかつて神戸の家具商の別荘だったもの。そこに残された家具も作品の一部となった。床に開けられた穴からは出土した貝塚が覗く。悠久の時や空間の広がりと、それに比べれば一瞬ともいえる人々の記憶や小さな家とが渾然となっている。
さらに遠く、月への想いを作品にしたのはロシアのアーティスト、レオニート・チシコフだ。〈旧沙弥小中学校〉では1972年に宇宙飛行士、チャールズ・デュークが月面に置いてきた家族写真などをモチーフにしたインスタレーションが展開される。
その校庭には三日月を船に、星空を海にたとえた柿本人麻呂の歌を元にした、展望台にもなるオブジェが。海の近くの小さなバス停や、瀬戸内海で最も古い灯台である与島の〈鍋島灯台〉にも宇宙飛行士や星空をモチーフにした作品がある。その一つひとつを巡りながら、月に託した人々の想いや旅人の孤独を感じてみよう。