生と死を問い、記憶を継承する。大巻伸嗣の個展が〈弘前れんが倉庫美術館〉で開催。
また、会場の入口で出迎える《Oak Leaf -the Given-(Right)》は、弘前市鬼沢地区に伝わる “鬼が腰掛けた” という伝説のある柏の木の葉をモチーフに、大巻自身の右手の血管の画像を葉脈に重ねた作品だ。柏の葉は、次の新しい葉が芽吹く準備ができるまで落葉しないという特性があり、そのさまを “生命” や “記憶の継承” と重ね合わせて作品に落とし込んだ。
〈弘前れんが倉庫美術館〉は、大巻の美術の師でもある、奈良美智ゆかりの美術館。
「私が美術へ進むきっかけになった先生である奈良美智さんからバトンを受け取ったような気持ちで挑みました」と大巻。一枚の柏の葉からはじまるこの展覧会だが、最後の展示室を出るときにも柏の葉の藍染暖簾が登場する。こちらは大巻の左手の血管の画像が重ねられ、右手から左手へ、鑑賞者と手と手をつなぐようにした展示構成となっている。この展覧会を見終わるとき、あなたは何を受け取っているだろう。
美術作家・大巻伸嗣の集大成であり、これからの代表作となりうる作品が一堂に会する。〈弘前れんが倉庫美術館〉青森県弘前市吉野町2-1 TEL 0172 32 8950。~2023年10月9日。9時~17時(入館は16時30分まで)。火曜休(8月1日は開館)。1,300円。