俳優の夢ばかり追っていたホラン千秋さん…現実に目を向け、大学進学を決めた恩師の一言
高校は都立国際高校(目黒区)に進学し、体育祭では団長、文化祭ではバンド演奏と演劇に打ち込むなど、高校生活の全てを行事にささげたと言ってよいほどです。
一方で、中学時代から今の芸能事務所に所属して俳優を目指していましたが、オーディションには落ち続けました。事務所の同世代や後輩の子が売れていくなか、だんだんと焦りも募っていきました。
高校3年になり、卒業後を思い悩む私と気さくに話をしてくれたのが、進路指導担当で国語教師だった岩崎昇一先生でした。岩崎先生は一見堅物なのですが、時々ぼそっとギャグを言ったり、「あなた、また大きな声で話してるね」とあきれた様子を見せたりと話しやすい雰囲気がありました。
進路について家族にも相談しましたが、アイルランド人の父は妥協を許さないタイプで、「何となくで大学に行って時間を無駄にする必要はない」という考えでした。私も芸能活動を優先したいと思い、特に大学に進学するつもりはありませんでした。
そんなある日のこと。いつものように岩崎先生と雑談していると、「人は何かに属してないと自分を見失っちゃうものだよ」と言われました。
先生は、仕事がないなら大学に行くのも一つの選択肢だということを示唆したのです。
今は高校という自分の居場所があり、仲間がいるけど、それがこの先全部なくなったらどうなるのだろう。とたんに現実に引き戻された感じがしました。人生に期待と現実があるとしたら、私は期待にしかライトをあてていなかった。岩崎先生は現実にもライトをあててくれたのでした。
それからは、指定校推薦枠がある青山学院大文学部英米文学科を目指すようになりました。私は大学には行かず俳優として活躍したかったので、大学進学を決めたのは「夢破れた」瞬間でもありました。そんな私に、岩崎先生は志望理由書の添削作業にとことん付き合ってくれるなど、伴走してくれているかのようでした。
大学進学後も、俳優としてなかなか芽が出ませんでしたが、在学中に米国留学で演劇を学び、演出や裏方の仕事を知ることができました。卒業後、情報番組やキャスターの仕事を志望したところ、オーディションに受かり、仕事が増えていきました。
今思えば、大学に行かなければ、キャスターの仕事をもらえず、在学中の米国留学がなければ、英語を使った仕事もなかったでしょう。当時、夢ばかりを追って現実から目を背けていた私を、先生はよく見ていたのだと思います。先生のあの言葉をきっかけに人生の選択をしていった結果が、今の自分につながっていると感じます。将来への道を示してくれた先生にはとても感謝しています。(聞き手・福元洋平)
ほらん・ちあき 東京都出身。父はアイルランド人、母は日本人。大学卒業後、「Nスタ」など報道番組やバラエティーなどに多数出演。9月29日からバラエティー「ニンチド調査ショー」でMCを務める。