主人公は市民。市原市にI’Museum Center(市原歴史博物館)が開館へ
Center」は、「市民を、主人公に。」という同館のコンセプトを表現したもの。
「埋蔵文化財調査センター」を前身として生まれた同館が目指すのは、市内の歴史遺産の価値や魅力を市民によりわかりやすく伝える、「歴史をつなぐ、人をつなぐ」博物館というあり方だ。鷹野光行館長は、開館にあたって次のようなコメントを寄せている。
市原歴史博物館は、大人も子供もここに来れば市原の歴史のことが何でも分かり学べる、見て触れて体験できる博物館です。そして何よりも地域の方々に愛され、周りの人たちに自慢できる博物館となります。
同館エントランスでは、王賜銘鉄剣、史跡上総国分尼寺跡など市内の歴史文化遺産をまとめた巨大フィールドマップを展示。この作成は、スポットの選定から市民とともに行われた。
常設展示では、東京湾と養老川との地理的・風土的な関わりを持つ同市の歴史を紹介。展示室は、「自然環境への適応」「フサの原像」「国府は市原郡にあり」「民衆のちから」「農・漁村から工業都市へ」「くらしの姿と生活道具」という6つの基本テーマで構成される。
同館の目玉となるのが、5世紀につくられた稲荷台1号墳(山田橋)で出土した「王賜」銘鉄剣と、五大力船の舵だ。
前者は、全国で7例のみ確認されている、古墳から出土した銘文入り刀剣。後者は、江戸時代から昭和初期に活躍した海川両用の貨客船「五大力船」の舵として現存する唯一の資料と、どちらも大変貴重なものになっている。
そのほか、タッチパネルの展示装置や、五大力船の舵を使った映像展示なども見どころとなる。
さらに、隣接する「歴史体験館」では、実際の遺物の発掘や、古墳時代の生活、古代衣装、少し昔の遊びなどが体験できるほか、「貝輪」や「勾玉」などをつくるプログラムも用意されるという。
「発掘体験」の舞台になっている「納屋風建物」「竪穴建物」も、開館前から市民とともにつくり上げたもの。制作にあたっては、土壁塗り、木材加工、屋根の上に土をかぶせる「土ぶき」などのワークショップを実施してきたという。
館内の展示を充実させるだけはなく、市内の歴史遺産をストーリー化しながらそれらを巡るルートを整備することで市原市全域をフィールドミュージアム(屋根のない博物館)と位置付けるなど、意欲的な活動を行ってきた同館。開館後の取り組みにも注目したい。