ロシア美術・文化機関のリーダーたちに辞任の波。侵略行為への不支持を表明
ARTnews
によると、昨年12月にモスクワに開館したプライベート・ミュージアム「GES-2」を運営するVAC財団の芸術監督であるフランチェスコ・マナコルダは、ウクライナの紛争を理由に辞任したという。
マナコルダはロシアのタス通信
に、「残念ながら、現在の出来事が労働条件や個人的条件を大きく変化させたため、私が誇れるような献身的な仕事を続けることはできないという結論に達した」とし、「私の決断は、多くの困難と悔恨の念をもって下されたものだ」と語っている。
またArtnet News
は、長年モスクワのプーシキン美術館の副館長を務めてきたウラジミール・オプレデレノフや、コスモスクワ・アートフェアの芸術監督であるサイモン・リースの辞任を報じている。
オプレデレノフは自身のInstagram
で同僚やパートナーに感謝を述べながら、「残念ながら、現在の世界の出来事に対する私の態度は、ロシア連邦文化省の多くの同僚と一致していない。近い将来、この状況が変わることを願っているが、現状では、私は愛する美術館を去らざるを得ない」と投稿した。
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リースはFacebook
の投稿で、「プーチンとその一派は、外交に耳を貸さず、輝かしい戦争と帝国のアイデアに狂おしいほど忠実な、古いスタイルの冷戦主義者だ。悲しいことに、ロシア国民の多くがこうした信念を共有している。そして、教育を受けたエリートたちは、プーチンと彼の価値観に対してまだ動員されていない(これは一種の暗黙の支持である)」と強く批判しながら、「モスクワとサンクトペテルブルクでの集団動員は、いまや急務だ」と訴えている。
「私は、その文化的エリートの枠組みのなかで、モスクワで勤めていた仕事を辞めることによって、En
Seule(ひとりだけでの)動員をした。小さな犠牲だ。ロシアにいる友人や同僚を思うと悲しくなる。それでも、私は、私たちが目撃している狂気の暴走について、意見を述べる自由を得たのだ」。
「私利私欲はさておき、私はこの侵略行為を支持しないウクライナの人々、ロシアとベラルーシの人々と絶対的な連帯感を感じている。そして、破壊と犠牲を最小限に抑えた迅速かつ前向きな解決を願うばかりだ」。
こうしたウラジーミル・プーチン大統領の戦争を支持しない姿勢で、自発的に退職の決断を下したリーダーたちがいるいっぽう、プーチン大統領と深い関わりを持つことで退任せざるを得なかったケースもある。
ニューヨーク・タイムズ
によると、ロシアの富豪のひとりであり、20年にわたりニューヨークのグッゲンハイム美術館の主要な支援者で評議員を務めてきたウラジーミル・O・ポターニンは、3月2日に退任すると発表したという。
理由は明らかにされていないが、同館は声明文で「ウラジーミル・ポターニンは評議員会に対し、直ちに評議員を退任する決定を下したことを伝えた」と発表。同館はこの決定を受け入れ、ポターニンの「当館への貢献と展示、保存、教育プログラムへの支援」に感謝しつつ、「ウクライナの政府と国民に対するロシアの侵略といわれのない戦争を強く非難する」と述べている。