初めて着物を買うなら?「留袖・訪問着・付けさげ」違いとTPOをプロが徹底解説
大切な日に着物デビューを成功させるため、染織・絹文化研究家の富澤輝実子さんの解説で、まずは選ぶべき着物の種類を押さえましょう。
撮影=桂太[フレイム] 『美しいキモノ』2022年夏号より
特別な日へ向け、あるいは何かのときに備えるなら、訪問着か付けさげがよいでしょう。両者は、格付けではなく作り方が異なります。
訪問着は、白生地を一度着物の形に仮縫いして(仮絵羽)、一枚のキャンバスとして下絵を描き、ほどいて染色。染め上がったらまた仮絵羽に仕立てるという手間がかかった作りです。
<写真>訪問着は現在最もポピュラーな社交着です。絵羽模様で裾全体の模様がつながり、上前の衿から胸にかけても一連の模様が入ります。また「共裾」といって、裾廻しに表地と同じ生地が使われます。模様の豪華さや紋の数でフォーマル度を調整でき、略礼装から盛装まで着分けられます。訪問着の装いすべて/富澤輝実子さん私物
訪問着の柄付けの特徴。ひとつは上前の衿から胸にかけて一連の模様が入ること。
訪問着の特徴その2。裾全体の模様がつながっており、裏側が表地と同じ生地の裾廻し(=共裾)になっています。
一方、付けさげはいわば「準訪問着」で、訪問着の工程を簡略化して価格を抑えたもの。訪問着に交じっても、それほど差は生じません(付けさげには表地と同色の裾廻しを選ぶとより訪問着的になります)。着用場面もほぼ変わらないのが実情で、結婚式参列、パーティや社交、大切なお茶会、お子様の成長行事や学校行事など、着物を思いつく行事はたいてい間に合います。
<写真>付けさげは反物の状態で、訪問着に準じた柄付けを行ったもの。一般的に訪問着より模様が断続的で、すっきりとした印象のものが多く、裾廻しは表地とは別の布が使われます。付けさげの装いすべて/富澤輝実子さん私物