過熱する中学受験、近畿の受験率14年ぶり10%台 高校完全無償化でさらに激化か
学習塾大手の日能研関西(神戸市)によると、近畿の受験者数は統一入試開始日の1月14日午前で1万7279人と、前年度より387人増加。少子化により小学6年生人口は減少しているため、同学年の児童全体に占める割合(受験率)は10・01%と14年ぶりの10%台に乗った。
日能研関西が統計を取り始めた平成18年以降で、近畿の受験率のピークは翌19年の10・47%。その後、26年に8・91%に低下したが、それ以降はコロナ禍の横ばいをのぞき、増加傾向が続いている。
今春、10%台まで復調した理由について、日能研関西の森永直樹取締役は「コロナ禍で私学教育が見直されたことが大きい」と指摘する。
森永さんは「今春の受験生は当時4年生。コロナ禍でICT化を進めていた私学教育が注目され、それまで関心がなかった層も参入した」と説明する。
今春受験の傾向として、最難関校の灘(神戸市)の志願者数が745人(前年652人)に増えるなど、前年の安全志向から一転、強気の受験となった。コロナ禍で敬遠された県をまたいでの受験も復調した。
一方、「私立らしく設備が充実していたり、面倒見の良い学校にも注目が集まった」といい、上宮学園(大阪市)や履正社(大阪府豊中市)、初芝立命館(堺市)などに志願者が集まったという。
地域別では、とりわけ人口流入の多い大阪市で受験熱が高まっているという。大阪府が打ち出す高校授業料完全無償化も、実現すれば、大きく影響しそうだ。私立中の授業料が無償になるわけではないが、高校授業料が無償化になれば、中高6年間の学費が従来より、抑えられるためだ。
森永さんは「無料テストなどの参加者が大阪では特に増えた。今まで中学受験を考えていなかった保護者が検討を始めている。今後も受験生が増加していくのではないか」と話す。
来年春の入試では、東大寺学園(奈良市)が高校募集をなくして完全中高一貫化を進めたり、滝川(神戸市)が共学化するなどの新たな動きも。森永さんは「私学志向が強まる今、学校改革を進める学校はより保護者の目に留まるだろう」と話していた。(木ノ下めぐみ)