年に一度だけ! 国宝《燕子花図屏風》が見られる特別展が〈根津美術館〉で開催。
「燕子花図屏風の茶会」は、政財界の名士を数名ずつ招き、約10日間にわたって東京・青山の自邸で開かれた。まず茶室で客人に懐石料理と濃茶を振る舞い、続いて付属する広間では薄茶でもてなした。その後、50畳の大広間に《燕子花図屏風》《藤花図屏風(ふじはなずびょうぶ)》《吉野図屏風》をずらりと並べ、客人を驚嘆させた。《燕子花図屏風》は、総金地に濃淡の群青と緑青のみによって描きだされた燕子花の群生が、時代を超えて鮮烈な印象を与える。
そのほか、茶会で披露された重要文化財の《鼠志野(ねずみしの)茶碗 銘 山の端(やまのは)》や重要美術品《雨漏(あまもり)茶碗 銘 蓑虫》などの季節の茶道具も展示。茶会の最後の席で飾られたという、尾形光琳作と伝わる《業平蒔絵硯箱(なりひらまきえすずりばこ)》も公開される。「伊勢物語」の第9段、燕子花の名所である三河の八橋(やつはし)の場面に想を得たとされる《燕子花図屏風》と、「伊勢物語」の主人公のモデルとされる在原業平を描いた《業平蒔絵硯箱》。「伊勢物語」を着想源に制作された2つの作品の展示も見どころだ。
5月10日~15日は夜間開館期間として、通常より2時間長く19時まで鑑賞することができる。喜寿を目前にした嘉一郎が精力的な亭主ぶりでもてなし、客人一同を感服させたというとりわけ盛大な「燕子花図屏風の茶会」。当時の様子に思いを馳せながら、3年ぶりにお目見えする国宝《燕子花図屏風》を心ゆくまで堪能したい。