ルーヴル美術館から「愛」の絵画が国立新美術館に来日!見逃せない一枚とは?
フランソワ・ジェラール 《アモルとプシュケ》、または《アモルの最初のキスを受けるプシュケ》1798年
パリ、ルーヴル美術館
西洋美術を古くからみると、そこにはざまざまな「愛」の様相が発見できる。ローマ・ギリシア神話に登場する神々の、ときにスキャンダラスで復讐劇にも発展する恋のドラマ。キリスト教絵画に見られる、博愛のこころや家族愛、自己犠牲的な愛のかたち。17世紀、18世紀になると、現実社会に生きる人間をモデルにした愛も、画家たちの主題になった。たとえば、優雅にダンスを踊りながら恋の駆け引きをする上級市民たち、酒場で顔を寄せ合う庶民などーー。
パリ・ルーヴル美術館の膨大なコレクションの中から、愛を切り口に精選した73点の絵画を紹介する本展。愛の多彩なありよう、そして画家たちはそれをどのような工夫や演出をもって絵にしたのか、が大きなテーマだが、「愛」というキーワードで見ると、いわゆる名作も新鮮に目に映って楽しい。
みどころのひとつ、フランソワ・ジェラールの《アモルとプシュケ》が描いているのは、愛の神キューピットが、妻となるプシュケの額にそっと唇を寄せるシーン。その頭上には一羽の蝶がひらひらと舞い、じつにロマンティックだ。19世紀の画家シェフェールの大作《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》は、ダンテの叙事詩『神曲』の「地獄篇」が主題。画面の対角線上に大胆な構図で描写されているフランチェスカとパオロ。この男女の悲しい恋路は(ふたりは、男の兄の嫉妬により、ナイフで刺され死んでしまう)、いまも多くの人を夢中にさせるラブストーリーだ。
アリ・シェフェール《ダンテとウェルギリウスの前に現れたフランチェスカ・ダ・リミニとパオロ・マラテスタの亡霊》1855年 パリ、ルーヴル美術館
『ルーヴル美術館展 愛を描く』|東京都美術館
@国立新美術館
開催中。6月12日(月)まで。
BY MASANOBU MATSUMOTO