リアル忍者を求めて…伊賀・甲賀の「忍びの里」、日本遺産の重点支援地域に
日本遺産はこれまでに104件が認定され、今年度は2017年度に認定された17件が審査対象に。重点支援地域となった伊賀、甲賀両市は、国からの関連事業への補助率が67%から72%にアップする。
「忍者の本当の姿を追究し、多くの人に体感してもらおうとする取り組みを評価いただけたのでは」。甲賀市で日本遺産関連の事業を担当する観光企画推進課主事(28)は、文化庁の判断をこう受け止める。
認定以降、両市は遺産を構成する文化財の寺社や中世城館跡などに案内板など計91基を設置。忍者について解説できる観光ガイドを養成しようと講座を開き、6年間で137人が受講した。両市の構成文化財を巡るツアーも実施してきた。
合同でホームページ「日本遺産 忍びの里 伊賀・甲賀」(https://www.shinobinosato.com)も開設し、観光のモデルコースやイベントを掲載する。今後は、訪日外国人客(インバウンド)の誘客にも力を入れる方針だ。
両市は、観光の拠点となる施設の整備も進めてきた。伊賀市は、人気スポットの伊賀流忍者博物館(上野丸之内)に加え、新たな忍者体験施設を武家屋敷・成瀬平馬家跡(同)に建設する計画だ。「新横浜ラーメン博物館」などを手がけた空間プロデューサー相羽高徳さんの設計で、来年11月の開館を目指す。
甲賀市は、甲南町にある既存施設を改修し、20年に「甲賀流リアル忍者館」を開館させた。漫画やアニメなどを通し、海外でも人気が高い忍者の実相を伝えるのが狙いだ。日本史家の磯田道史さんを団長とする「甲賀流忍者調査団」の展示室を特設し、21年12月、市内で発見された忍術書「軍法 間林清陽(かんりんせいよう)」の写本(複製)など新資料も紹介している。
ただ、伊賀市観光戦略課の担当者は「日本遺産に認定されていることを知らない市民が多い」と課題も挙げる。5月から両市の広報紙で「日本遺産コーナー」を設け、今後も奇数月に掲載する。「地元への周知こそが重要。日本遺産・忍びの里を、市民の誇りに育てたい」と話している。