大空目指した女学生の貴重なメダル展示 絶たれた夢は娘がかなえ
1937年に開かれた「第1回全日本帆走飛行競技大会」には、ギリシャ神話の若者・イカロスと同じように大空にあこがれた女学生2人が参加した。そのうちの一人、羽衣高等女学校(大阪府高石市、現羽衣学園中学・高校)の4年生だった野口種子さん(当時17歳)=99年死去=の遺族から、今回の展示を機に、陶製に切り替わる前の貴重な金属製メダルが奈文研に寄贈された。
遺族は野口さんの娘の伊達のり子さん(73)=カナダ・トロント市在住。第1回大会の様子を報じた当時の大阪毎日新聞の記事では、野口さんは「卒業したら飛行学校に入り立派な滑空士になる」とコメントしており、学校が当時作った無声映像「大空へ」でも飛行機操縦士になる夢をかなえる主人公の女学生役を演じていた。
大会直後に日中戦争が始まったため、夢は絶たれたものの、野口さんはイカロスが描かれたメダルを大切に保管してきた。奈文研の岩戸晶子・展示企画室長によると、陶製メダルは数点確認できたが、金属製メダルは野口さんのものしか見つかっていないという。
伊達さんはそんな母の思いを知らなかったが、まるで何かに導かれるようにカナダで操縦士になった。メダルを受け取った岩戸室長は「戦争前には女性が夢を語ることができた短くも平和な瞬間があった。娘の伊達さんがパイロットになったのも興味深い」と話している。「大空へ」は展示会場でも上映している。【稲生陽】