『ブリヂストン「中国企業への事業売却」を叩くムードが、日本の衰退につながったワケ』へのユーザーの意見まとめ
【大規模なリストラ】
12月19日、『朝日新聞』が「ブリヂストン、従業員8千人を転籍へ 防振ゴム事業は中国企業に売却」と報道した。来年夏までに防振ゴム事業を中国企業に、自動車部品などの化成品ソリューション事業も投資ファンドに売却、国内外で22カ所の事業所を譲渡し、従業員約8000人に転籍を求めるという。
ブリヂストンといえば、世界に114(2021年5月時点)の生産拠点をもち、150を超える国々で事業を展開し、ミシュランとし烈な世界一シェア争いを続けているがことでも知られている。そんな日本を代表するグローバル企業が、中国企業に事業の事業を売ってしまう。しかも、それが日本経済を支えてきた自動車産業の中でも「車の関節」と呼ばれ、なくてはならない防振ゴム事業。ダブルパンチで、ネット上にはネガティブな反応が多く見られる。
そこで目につくのは「中国に日本の技術がどんどん買い叩かれる」という批判だ。昨今の経済安全保障の議論とからめて、収益性が低い部門だからと切り売りを続けていくと、技術だけではなく人材も流出するので、日の丸半導体と同じ衰退の道をたどってしまうというのだ。中には、防振ゴム技術は軍事転用も可能だから、中国や韓国企業への事業売却を規制せよ、なんて主張をする方もいらっしゃる。
マスコミが連日のように「中国の脅威」を叫ぶ中で、このような鎖国的な考えに流れるのはよく理解できる。が、残念ながらこういうムードの高まりが逆に、日本を衰退させてしまう恐れもある。
今回のブリヂストンのような「事業再編」の動きを批判したり、叩いたりすればするほど、優秀な日本人技術者が、中国や韓国など新興企業にどんどん流れてしまうからだ。優秀な人材が海外に流出した原因 「バッカじゃねえの! 中国企業に事業を売却している時点で技術がダダ漏れなんだよ、そんなことも分からねえのか」という怒声が全方向から聞こえてきそうだが、日本のお家芸がどのように衰退してきたのかという歴史を客観的に振り返れば、優秀な技術者が海外に流出してしまった最大の原因は、やるべきタイミングに「事業再編」を決断できず、海外のライバルに稼ぐ力で惨敗してしまったことが大きい。
要するに、グローバル競争に背を向けて自分たちの殻に閉じこもっているうちに急速に貧しくなって、技術者を食わせてやることができなくなってしまったのだ。
その代表が、日本衰退の象徴となっている半導体だ。
かつて世界シェア6割を占めた日の丸半導体が、なぜこうも分かりやすく衰退したのかということには、「韓国が技術をパクったからだ!」とか「日本企業が冷遇した優秀な技術者を、札束で頬を叩くように引き抜いたからだ」という、「善良な日本人がアコギな外国人にハメられた説」を盛んに吹聴をする人たちがいるが、これはあくまで「結果」に過ぎない。
このような「技術者バーゲンセール」という状況を招いた原因は、半導体技術を持つ企業が頑なに現状維持に固執したことである。
富士通で半導体部門のトップを務め、現在は半導体の設計ベンチャーを経営する藤井滋氏がそのあたりを端的に語っているので、引用させていただこう。
『欧米では1990年代に半導体事業が総合電機からスピンアウトした。日本でそれが起こったのは2000年になってからだ。そうしてできたのがエルピーダ(メモリ)とルネサス(エレクトロニクス)の2社だが、意思決定が10年以上遅かった』(東洋経済オンライン 21年9月22日)
ご存じのように日の丸半導体は、総合家電メーカーの一部門、自動車メーカーの下請け的な存在で成長をしてきた。「安くて高品質」というのも、「親を喜ばすいい子」が生きる知恵として磨いたスキルだ。が、そんなドメドメの「家内制手工業」のような前近代的なビジネスモデルが、し烈なグローバル競争の中で生き残っていけるわけがない。次ページは:技術と人材の海外流出前へ1234次へ1/4ページ