「ちはやふる」創作ノートを大公開!百人一首の持つ奥深い魅力とは?
「ちはやふる」の名場面は、このノートから生まれた!
今冬発売のコミックス第50巻で完結することが発表された人気マンガ『ちはやふる』。それに先立ち、作者の末次由紀さんが百人一首の名歌について学び、アイデアを膨らませるために作成した創作ノートが単行本として発売されます。その名も『ちはやふる百人一首勉強ノート』。今回は、その「はじめに」の部分を特別に公開します。
自筆の文章とイラストで鮮やかに描かれる百人一首の豊かな世界へようこそ!
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小さい頃からノートを作るのが好きでした。もともと、白い紙と鉛筆さえあれば、ずっと絵を描き続けているような子どもでしたが、勉強をするときも、書いて覚えようとするタイプでした。小学生だった頃から今に至るまで、書かないと身にならない、という思いは変わっていないような気がしています。
2007年から連載をしている漫画『ちはやふる』には、競技かるたに青春を懸けるキャラクターが登場します。主人公・綾瀬千早のように、音を重視するキャラクターもいれば、クイーンの若宮詩暢(しのぶ)のように、小倉百人一首の歌人の個性など、歌の中身を重視するキャラクターもいます。
最初の頃は、必要になるたびに各首について少しずつ勉強していましたが、連載が進むにつれて、詩暢という人物を書き込むためにも、彼女の目線に近づきたい、そう思って、第一首から第百首まで、一から勉強しようと作りはじめたのが、このノートです。
それぞれの歌にはどのような技巧が凝らされているのか、何がきっかけで詠まれたのか、作者や時代背景を知りたいと思って、百人一首についての文章をいろいろ読みました。もちろん文章を読んでわかったこともたくさんありますが、読むだけでは、通り過ぎてこぼれ落ちてしまう部分も出てきます。だから小さかった頃と同じように、ノートにしてみました。
でも、自分で書いた文字をもう一度読み返すのは、じつはそれなりにカロリーを消費します。目視的に楽しくないと、何度も自分で見返そうというモチベーションを維持できないので、歌人たちの絵を描くことにしました。なかには、少しおちゃらけたキャラクターも登場させて。
結果として、絵を描いてみたことは、歌の作者についてのイメージをふくらませる糧になりました。高校生の頃には、百人一首のクラブに入っていて、クラブの前の授業中に百人一首の本をこっそりと読んだりしていたのですが、やはり自分の手を動かしてみないと疑問も浮かばないんですね。
同じ百人一首の歌人といっても、時代でいえば、じつは500年くらいの開きがあります。最初に勉強をはじめた頃は、第一首の天智天皇の頃も衣装は後の平安時代と同じだろうと思っていましたが、調べてみるとまったく違うことに気づきました。時代が進むにつれて、どんどん衣装の流行も変わっていったのがわかるようになりました。当然、男性と女性でも違うし、身分によってもまた違う。天皇じゃないと、この衣装は着ないんだ、といったことも知りました。