「ノリのよさ一緒だな」…音楽との「二刀流」で出会った醤油店主とノリ漁師、初コラボ
6月29日、熊本県多良木町交流館石倉であったコンサート「海苔としょうゆ」。オペラ「トスカ」の「妙なる調和」や「千の風になって」で馬場さんの伸びやかな歌声が響いた。徳永さんもピアノ曲「ラ・カンパネラ」などを披露した。
客席を埋めた約280人から温かい拍手を受け、馬場さんは「たくさんの人の前で歌えてありがたかった」と感謝した。
馬場さんは、1926年創業の馬場醤油店の3代目。幼い頃から歌うことが好きで、プロに師事し、30歳で初のリサイタルを開いた。九州豪雨で店が被災したが、人吉市内の仮設商店街で営業を再開した。現在も地元を中心に公演活動を続ける。
徳永さんは52歳の時、テレビで見たフジコ・ヘミングさんの演奏に感動し、ピアノを始めた。仕事以外の時間をほぼ練習に費やし、2021年には本人との初共演も果たした。
「よく似たこの二人が共演すれば必ず面白くなる」。コンサートは多良木町のピアノ教師石尾ゆかりさん(59)が企画した。友人のピアノ教室の発表会にゲスト出演した徳永さんに呼びかけ、親交のあった馬場さんにも依頼したという。
チケットは予約開始後、10日ほどで完売した。馬場さんは独唱後のアンコールで、母校・多良木高の校歌や球磨焼酎と温泉をテーマにした「フニクリ・フニクラ」の替え歌を披露した。続いてステージに上がった徳永さんは演奏だけでなく、軽妙なトークやマジックで会場の笑いを誘った。
初めて顔を合わせたという二人は、「ノリのよさなどが一緒だなと感じた」「音楽の素晴らしさをストレートに伝えている」とたたえ合った。鑑賞した元中学教諭の松岡泰子さん(68)は「二人の人柄の良さがにじみ出た素晴らしいコンサートだった」と話した。
今回は実現できなかったが、伴奏と歌を合わせた再共演を実現したいという。「伴奏をするにはまだ自分の力が足りない」と謙遜する徳永さんに対し、馬場さんは「次は(イタリアの大衆歌謡の)カンツォーネを歌いたい。ぜひ徳永さんの伴奏で」と語った。