藤田嗣治だけの美術館から川内倫子、あいち2022まで。3連休に見たい展覧会ベスト13
「乳白色の下地」の裸婦像で知られる画家・藤田嗣治(レオナール・フジタ、1886~1968)。日本初の、藤田嗣治だけを展示する個人美術館・軽井沢安東美術館が10月8日にオープンする。
同館は多くの企業再生に関わってきた実業家・安東泰志が夫妻で長年収集し、自宅に展示してきた藤田作品約180点を収蔵する個人美術館。安東夫妻は、「皆様を自宅に招くような気持ちで、美術館を心地よく楽しんでいただき、ゆっくり藤田作品を鑑賞していただきたい」という想いから、私財を投じてこの美術館を設立したという。
オープン企画では開館を記念し、所蔵作品約180点から、ほぼ全ての主要作品を展示されており、4つのコンセプトで構成。これらの作品に加え、通常美術館では展示されないような藤田のユニークな作品も紹介されており、藤田がどのような人物であったかが伺える大切な資料となっている。都心を離れて、安東美術館で穏やかな時間を過ごしてみてはいかがだろうか。
住所:長野県北佐久郡軽井沢町軽井沢東43番地10
電話番号:0267-42-1230
開館時間:4~10月 10:00~17:00(開館日10/8は13:00~) / 11~3月 10:00~16:00
休館日:水(祝日開館、翌日休館) ※年末年始、2月にメンテナンス休館
料金:一般 2000円 / 高校生以下 1000円 / 未就学児無料
来年の「東京ビエンナーレ2023」を前に。「東京ビエンナーレ2023 はじまり展」(東叡⼭寛永寺、東京ドームシティ、優美堂ほか)
2023年7月から10月にかけて開催が予定されている「東京ビエンナーレ2023」。これに先駆け、「東京ビエンナーレ2023
はじまり展」が10月6日に開幕した。
本展は、2023年のトリエンナーレに向けての計画展示と、すでにスタートしている複数のアートプロジェクトを紹介するもの。会場は東京・上野の東叡山寛永寺、後楽園の東京ドームシティ、神田小川町の優美堂の3ヶ所だ。
東叡山寛永寺では、日比野克彦、鈴木理策、西村雄輔、中村政人が参加する「寛永寺プロジェクト」が開催されており、創建からまもなく400年を数える寛永寺の歴史や空間と対峙し、多様な人々と協働しながら新たな関わりを探るというものだ。また、東京ドームシティでは高橋臨太郎の《Radius
harps / After a
typhoon》、優美堂では前回展でスタートした「優美堂再生プロジェクト」が展開されている。来年のビエンナーレ開催に先駆け、そのスピリットを堪能してほしい。
会期:2022年10月6日~10月30日
会場:東叡⼭寛永寺、東京ドームシティ、優美堂ほか
開館時間:寛永寺会場 10:30~16:30(根本中堂は~16:30)
東京ドームシティ 終日公開(1:30~4:30は立入不可)
優美堂会場 11:30~18:00(木金土は~20:00)
休館日:月~水(寛永寺)、水(優美堂)
料金:無料
草間彌生の創作の現在地に迫る。「毎日愛について祈っている」(草間彌生美術館)
草間彌生美術館が、10月7日より「毎日愛について祈っている」を開催する。
草間彌生は、最新の絵画群の背面に「EVERY DAY I PRAY FOR
LOVE」というセンテンスを繰り返し記すようになったという。それは、書き添えられた詩とともに作品タイトルであり、さらにはシリーズタイトルでもある。現在、草間はこの新シリーズの制作に懸命に取り組んでいる。
本展では、同シリーズを初披露。近作から絵画作品を中心に展覧し、草間の創作の現在地を紹介する。近年の「わが永遠の魂」の制作や、2000年以降断続的に取り組んできたマーカーペンによるドローイングの小品、最新作である覗き込むタイプの小型ミラールームやインスタレーションなどの草間の視覚を体感できる作品を見ることができる。
会期:2022年10月7日~2023年2月26日
会場:草間彌生美術館
住所:東京都新宿区弁天町107
開館時間:11:00~17:30 ※日時指定の予約・定員制(各回90分)
休館日:月、火、水(祝日の場合は開館)、2022年12月26日~ 2023年1月6日
料金:一般 1100円 / 小中高生 600円 / 未就学児は無料
竹内栖鳳芸術の変遷をたどる。特別展「没後80年記念 竹内栖鳳」(山種美術館)
近代京都画壇の中心的存在として活躍した竹内栖鳳(せいほう、1864~1942)。その没後80年を記念し、山種美術館では10年ぶりに竹内栖鳳の特別展が開催される。
本展では、動物画の傑作にして栖鳳の代表作・重要文化財《班猫》をはじめとする同館所蔵の栖鳳作品全26点や、東京国立博物館所蔵の《松虎》(前期展示)、個人蔵の初公開作品を含む初期から晩年までの栖鳳作品が一堂に公開。動物や風景をバリエーション豊かに描き出した栖鳳芸術の変遷をたどる。
また、その弟子のひとり、村上華岳(かがく)による重要文化財《裸婦図》を特別に公開するとともに、京都画壇の先人たち、同時代に活躍した都路華香(つじかこう)や山元春挙(やまもとしゅんきょ)らの作品も展覧。江戸時代から近代・現代に至るまで、京都画壇の選りすぐりの画家たちの競演を楽しんでほしい。
会期:2022年10月6日~12月4日
会場:山種美術館
住所:東京都渋谷区広尾3-12-36
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00 ※入館は閉館30分前まで
休館日:月(10月10日は開館)、10月11日
料金:一般 1300円 / 大学生・高校生 1000円 / 中学生以下無料(付添者の同伴が必要)
日本で紹介する機会が少なかった作家に注目。「消息の将来」(BankART KAIKO、BankART Station)
日本を代表する現代美術家のひとり、シュウゾウ・アヅチ・ガリバー。その大型個展「消息の将来」展が、10月7日より神奈川県横浜市のBankART
KAIKOとBankART Stationの2館で同時開催される。
シュウゾウ・アヅチ・ガリバーは1947年滋賀県生まれ。64年に制作活動を開始し、60年代後半の熱い文化芸術の現場を駆け抜けた、現在も活躍する作家のひとりだ。近年は海外での作品発表を主な活動としており、昨年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)が作品を収蔵、展示公開したことでも知られている。
本展は、2022年3月に逝去した池田修が代表を務めていたBankART1929が主催となり、作家のその貴重な活動を日本で広く紹介するとともに、世界の文化芸術の広がりに貢献するというもの。日本では紹介することが少なかったアヅチの活動を、ぜひこの機会に目撃したい。
会期:2022年10月7日~11月27日
会場:BankART KAIKO、BankART Station
住所:横浜市中区北仲通5-57-2 KITANAKA BRICK & WHITE 1F、横浜市西区みなとみらい5-1 新高島駅B1F
電話番号:045-663-2812
開館時間:11:00~19:00
休館日:会期中無休
料金:観覧のみ1200円 / カタログ付チケット 3800円
鉄道と美術の関係を読み解く。「鉄道と美術の150年」(東京ステーションギャラリー)
日本の鉄道開業150周年を記念した展覧会「鉄道と美術の150年」が、東京ステーションギャラリーで開催される。
1872(明治5)年に新橋~横浜間で開業した日本の鉄道。同じ頃、「美術」という語が初めて登場し、鉄道と美術は、日本の近代化を経て150年の時を歩み続けてきた。本展は、美術を介して鉄道史を振り返るもの。1854年にアメリカより贈られた蒸気機関車の模型を表した画巻から、日比野克彦が2021年にデザインした電車のヘッドマークに至るまで、近現代鉄道絵画の傑作が集結する。
また、中村宏、立石大河亞、宮島達男、柳幸典、島袋道浩、Chim↑Pom from
Smappa!Groupら、鉄道と美術の意外な関係を提示するような現代美術の作品も見どころのひとつ。およそ150件の作品・資料を通して、政治な社会や戦争、風俗など様々な視点も交え、鉄道と美術150年の様相を読み解き、両者の関係に迫る。
会期:2022年10月8日~2023年1月9日
会場:東京ステーションギャラリー
住所:東京都千代田区丸の内1-9-1
電話番号:03-3212-2485
開館時間:10:00~18:00(金~20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月(10月10日、1月2日、1月9日は開館)、10月11日、12月29日~2023年1月1日
料金:一般 1400円 / 大学・高校生 1200円 / 中学生以下無料
100点弱の20世紀美術の名品が来日。「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」(国立西洋美術館)
パブロ・ピカソの生涯にわたる作品を所蔵することで知られるベルリン国立ベルクグリューン美術館のコレクションから、20世紀美術の名品が来日する。そんな作品が見られるのが、10月8日に国立西洋美術館で開幕する「ピカソとその時代 ベルリン国立ベルクグリューン美術館展」だ。
ドイツ生まれの美術商ハインツ・ベルクグリューン(1914~2007)のコレクションを紹介する本展。そのコレクションは、ベルクグリューン自身がもっとも敬愛した同時代の4人の芸術家たち、パブロ・ピカソ、パウル・クレー、アンリ・マティス、
アルベルト・ジャコメッティの作品に重点を置いており、創造性と生命力にあふれた20世紀の巨匠たちの芸術を後世に伝えている。
2000年にその主要作品をドイツ政府が購入し、04年にはベルクグリューン美術館と改称した同館の改修を機に実現した本展覧会では、ベルクグリューンがつくり上げた個性的で傑出したコレクションから日本初公開作品76点を含む97点を紹介。同館の設立後、館外でまとめてコレクションを紹介する初の展覧会をお見逃しなく。
会期:2022年10月8日~2023年1月22日
会場:国立西洋美術館
住所:東京都台東区上野公園7-7
電話番号:050-5541-8600
開館時間:09:30~17:30(金土~20:00)※入館は閉館30分前まで
休館日:月(2022年10月10日、2023年1月2日、1月9日は開館)、2022年10月11日、12月30日~2023年1月1日、1月10日
料金:一般 2100円 / 大学生 1500円 / 高校生 1100円 ※混雑緩和のため、事前予約制(日時指定券)を導入。詳細は展覧会サイトへ
川内倫子の創作の核に迫る。「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」(東京オペラシティ アートギャラリー)
国内では約6年ぶりとなる写真家・川内倫子の美術館個展「川内倫子:M/E 球体の上 無限の連なり」が、10月8日より東京オペラシティ
アートギャラリーで開催される。
本展は、川内の直近約10年の活動に焦点を当て、その作品の本質に迫るもの。新作シリーズ「M/E」を中心に、未発表作品や国内で紹介される機会が少なかった作品を織り交ぜる会場構成となる。2019年にアイスランドで撮影した氷河や雪景色に、コロナ禍での身近な風景などを加えた「M/E」シリーズの全貌は本展で初めて披露される。
また本展では、川内の映像作品や2018年に出版した写真絵本『はじまりのひ』を朗読したサウンドなども展示。初期から一貫して人間や動物、あらゆる生命が持つ神秘や輝き、儚さ、力強さを撮り続けている川内の創作の本質をぜひ堪能してほしい。
会期:2022年10月8日~12月18日
会場:東京オペラシティ アートギャラリー
住所:東京都新宿区西新宿3-20-2
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:11:00~19:00(11月3日~6日は10:00~) ※入場は18:30まで
休館日:月(祝日の場合は翌火)
料金:一般 1200円 / 大・高生 800円 / 中学生以下無料
マン・レイが愛しのオブジェに注目。企画展「マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち」(DIC川村記念美術館)
マン・レイのオブジェ作品に特化した国内初の展覧会「マン・レイのオブジェ 日々是好物|いとしきものたち」が、10月8日にDIC川村記念美術館で開幕する。
本展は、作家が活動の後期より「我が愛しのオブジェ」と称したオブジェ作品に注目し展観するもの。国内に所蔵されるマン・レイのオブジェ作品およそ50点を軸に、関連作品や資料を合わせた約150点を展示し、なかには《破壊されざるオブジェ》《贈り物》《ニューヨーク
17》などの代表作も含まれる。
さらに会場では、ストックホルム近代美術館の協力を得て、マン・レイが「我が愛しのオブジェ」と題して約30点のオブジェを取り上げた手書きのアルバムの内容を、全ページ日本語字幕つきのスライドショーとともに本邦初公開する。
会期:2022年10月8日~2023年1月15日
会場:DIC川村記念美術館
住所:千葉県佐倉市坂戸631
電話番号:050-5541-8600
開館時間:9:30~17:00 ※入場は16:30まで
休館日:月(10月10日、1月2日、1月9日は開館)、10月11日、12月25日~1月1日、1月5日、1月10日
料金:一般 1500円 / 学生・65歳以上 1300円 / 小中学生・高校生 600円
実際に座って鑑賞できる椅子も。企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」(東京都美術館)
椅子という、私たちの身近にある家具に光を当てる企画展「フィン・ユールとデンマークの椅子」が、10月9日まで東京都美術館で開催されている。
デザイン大国として知られる北欧の国デンマーク。本国のデザイナーのなかでも、フィン・ユール(1912~1989)は、ひときわ美しい家具をデザインしたことで名を残している。本展では、デンマークの家具デザインの歴史と変遷をたどり、その豊かな作例が誕生した背景を探るとともに、モダンでありながら身体に心地よくなじむフィン・ユールのデザインの魅力に迫る。
また、椅子のデザインにはじまり、理想の空間を具現した自邸の設計や、住居や店舗、オフィスのインテリアデザインまで、フィン・ユールの幅広い仕事を紹介するとともに、会場では、実際に椅子に座って鑑賞できる空間も設けられている。
会期:2022年7月23日~10月9日
会場:東京都美術館 ギャラリーA・B・C
住所:東京都台東区上野公園8-36
電話番号:03-3823-6921
開室時間:9:30~17:30(金~20:00) ※入室は閉室の30分前まで
料金:一般 1100円 / 大学生・専門学校生 700円 / 65歳以上 800円
コロナ時代の「生」について考える。国際芸術祭「あいち2022」(愛知芸術文化センター、一宮市 常滑市 有松地区〈名古屋市〉ほか)
3年に1度開催される国際芸術祭「あいち2022」が、愛知県内各所を会場に行われている。会期は10月10日まで。
今年のテーマは「STILL
ALIVE」(今、を生き抜くアートのちから)で、愛知県出身で世界的に評価されるコンセプチュアル・アーティストの河原温が、1970年代以降に電報で自身の生存を発信し続けた「I
Am Still Alive」シリーズから着想を得たもの。国内外から100組のアーティストを招聘し、この「STILL
ALIVE」を多角的に解釈し、過去・現在・未来を往来しながら、困難な時代に生きる私たちの「生」について考えさせる。
会場は愛知芸術文化センターのほか、一宮市、常滑市、有松地区(名古屋市)のまちなかにも展開。プログラムは「現代美術」「パフォーミングアーツ」「ラーニング」「連携事業」「オンライン展開」の5つから構成されている。この時代をどうやって生き抜くことができるのか、そしてアートがどのようなことを教えてくれるのか。ぜひ会場で確かめてほしい。
会期:2022年7月30日~10月10日
会場:愛知芸術文化センター、一宮市 常滑市 有松地区(名古屋市)ほか
開館時間:会場によって異なる
料金:現代美術展 フリーパス一般 3000円 / 学生(高校生以上)2000円1DAYパス一般 1800円 / 学生(高校生以上)1200円
独自の詩的な静謐さにあふれる写真作品群。「アレック・ソス Gathered Leaves」(神奈川県立近代美術館 葉山)
アメリカの現代写真を牽引するアレック・ソスの、日本の美術館では初となる展覧会「アレック・ソス Gathered
Leaves」展が、10月10日に神奈川県立近代美術館 葉山で閉幕する。
ソスは1969年アメリカ・ミネソタ州ミネアポリス生まれ。これまでは出身地を拠点としつつ、緻密なコンセプトに基づいたプロジェクトとして国内外への旅を重ね、自然や人々をとらえてきた。その作品は、ドキュメンタリー写真の手法を継承しながらも独自の詩的な静謐さを湛え、国際的に高い評価を得ている。
本展は、ソスの初期の代表作「Sleeping by the Mississippi」から最新作の「A Pound of
Pictures」まで、アメリカを題材とする5つのシリーズを同館の展示空間に合わせて構成。また、カラードキュメンタリー写真のイメージが強いソスの作品からモノクロームの大型写真シリーズ「Songbook」
も紹介されており、イメージとコンセプトの連関を探る。
会期:2022年6月25日~10月10日
会場:神奈川県立近代美術館 葉山
住所:神奈川県三浦郡葉山町一色2208-1
電話番号:046-875-2800
開館時間:9:30~17:00 ※入館は閉館の30分前まで
料金:一般 1200円 / 20歳未満・学生 1050円 / 65歳以上 600円 / 高校生 100円
※新型コロナウイルス感染防止対策として、入場制限を行う場合がある
過小評価されていた画家たちに再びハイライト。「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」(SOMPO美術館)
現在、SOMPO美術館で開催中の「スイス プチ・パレ美術館展 印象派からエコール・ド・パリへ」も、10月10日に閉幕を迎える。
プチ・パレ美術館は、熱心な美術蒐集家でもあった実業家オスカー・ゲーズのコレクションを公開する場として、1968年に開設された。そのコレクションには、ルノワールやユトリロといった有名な作家に加えて、あまり知られていなかった画家たちによる優れた絵画も数多く収蔵されている。創設者の逝去後、現在まで休館しており、その収蔵品展が日本で巡回開催されるのは約30年ぶりのことだ。
本展では、印象派や新印象派、ナビ派、フォーヴィスム、キュビスム、エコール・ド・パリなどの様々な絵画運動が生まれ、絵画における実験的な表現方法が探究された、世紀転換期のパリの画家たちが集結。19世紀後半から20世紀前半にかけてのフランス近代絵画の流れを改めて確かめたい。
会期:2022年7月13日~10月10日
会場:SOMPO美術館
住所:東京都新宿区西新宿1-26-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:開館時間10:00~18:00 ※入館は閉館30分前まで
料金:一般 1600円 / 大学生 1100円 / 小中高生無料