豪雨災害、コロナ禍乗り越え21年 すべてが手づくりの「ホタル舟」惜しまれつつ幕…いつの日か復活を願って【鹿児島発】
さつま町二渡の自然豊かな川内(せんだい)川の川岸に浮かぶ木の舟。「ホタル舟」は、この舟で約40分間川を巡り、ホタルを鑑賞するツアーだ。
元々は、地元の仲間内だけで、漁をするための手づくりの川舟でホタル観賞を楽しんでいた。これを「村おこしに生かせないか」と、2003年に有志で「二渡がらっぱボタルの会」を結成。2004年に営業運航を始めた。「がらっぱ」とは地元の言葉でカッパのことで、川内川には「がらっぱ」の伝説が多い。
2016年の映像を見ると、まるで、木々に宝石がちりばめられているかのような光景が広がっていた。
それから7年。最後の営業運航を翌日に控え、地元の子供たちを招き試運転が行われた。
「舟が動いている時には明かりを絶対に出さないでください」と子供たちに説明するのは、がらっぱボタルの会の会長・下麦清正さん(72)。コロナ禍で運航を休止していたため、お客さんを乗せるのは4年ぶりだ。
「いた?いた?」と、ホタルを探す子供たち。目を凝らして見ると、ぽつぽつと、優しい光を放つホタルが姿を現した。しかし、7年前の映像と比べると、ホタルは激減していた。2021年7月の大雨で幼虫が流されたのが原因だという。
下麦さんはスタッフを集め「明日から本番です。最後、事故がないように、それだけを十分注意して、やりたいと思います」と話した。
ホタルが減ったこととメンバーの高齢化を受け、二渡のホタル舟は2023年、幕を下ろす。
受付に誘導役、船頭まで何もかも手づくりで運営してきたホタル舟。営業運航をするため、男性メンバーの多くが船舶の免許も取った。
使っている舟も手づくりだ。メンバーの一人、富永俊一さん(74)が丸太から製材してつくり上げた。
二渡がらっぱボタルの会・富永俊一さん:
7mの木材を買ってきて、製材して、それを1年間乾かすんです。それからやっと舟ができるんです