気づけばアートに引き込まれる「耳で聴く美術館」人気の理由
第一線で活躍する数多くの著名な人たちにインタビューしてきたコラムニスト芳麗が、彼女の魅力と、急激にファンを獲得できたその理由に迫る。
フォロワー数16万人を越えるTikTokのほか、さまざまなプラットホームでアート関連の動画を発信する「耳で聴く美術館」のAvi。歴史的な名画や現代アートを、その背景にあるストーリーとともに紹介する人気シリーズは、1動画650万再生超を記録するものも。国内の美術展の紹介やアーティストへのインタビューなども動画にして、若い世代のアートファンを増やすなど影響力を強めている。
■アートの出自でも、ふつうの一人の若者だった
「今、最も力を入れているのは、若手アーティストを紹介する動画です。誰もが知る名画シリーズのほうがより再生回数が上がるのですが、今の私の活動の核は、世間一般的に認知されない、現代アートや若手アーティストを盛り上げたいという思いがあります。そのための動線として、様々な動画を作っています」
この志が、全国を飛び回る多忙な活動を支える。とはいえ、最初から大志を抱いていたわけではない。およそ2年前までは、我が道を模索する若者の1人だった。
「子どもの頃から図工は得意でしたが、アーティストになれると思ったことはなくて。でも、何かしらアートに携わる仕事に就きたいなと思っていました。
大学は発達科学部という学部で、芸術分野の学科にいました。学生は、美術系の人もいれば、ダンスやピアノが得意な人もいて、教授陣も個性的で、個々が自由に楽しく自分を表現できる環境だったんです。アートの世界と、そこにいる人たちに強く惹かれました。ここは自分が自分でいられる優しい世界なんだなと」
当初は美術の教師を目指したものの、教育実習で人前に立つことが苦手だと感じて断念。現代アートの学芸員の道も模索したがかなわなかった。就職活動をして老舗鉄鋼メーカーに入社する。
「昔ながらの体制の会社でした。総合職の社員は男性が9割で、女性の先輩はほぼいませんでした」