「集いの場」仕掛け人×東大研究者でつくる食と研究が出会う「学食」明日も行きたくなる秘密に迫る
仕事にしろ、遊びにしろ、大部分がオンラインで可能な現在。一方で、リアルな人との出会いやセレンディピティを創出する場として、今こそ街にあるさまざまなダイニングスペースに注目したい。そこはきっと、胃袋だけでなく、心も満たされ、新しいものが生まれるきっかけや根源となるはずだ──。
昨年10月に東京大学駒場キャンパス内にオープンした「食堂コマニ」にお邪魔した。この学食をプロデュースしたのは、バブル絶頂期にオープンし、クラブ・シーンの幕開けとなった伝説のクラブ「芝浦GOLD」や丸の内のコミュニティ創りをテーマにした「MUS MUS」「来夢来人」を手掛けた、テーブルビート代表取締役の佐藤俊博氏。
佐藤氏と一緒に「食堂コマニ」をディレクションしている玉田泉氏と共に話を聞いた。
学生や教授陣だけでなく、近隣の人から世界中の研究者まで幅広い人が訪れる東大駒場キャンパス。そもそもは大学によくある普通の食堂だったところを新たにリニューアルしたのが、「食堂コマニ」である。ダイニングスペースに研究のエッセンスを取り入れたコンセプトで、イノベーションを促し、コミュニケーションが生まれるようなプラットフォームを目指したという。
玉田:東大の生産技術研究所(以下、生産研)の方たちと、食堂が面白くなれば日本の未来も変わるよね、という話から始まりました。東大には将来を担う優秀な人材が数多くいて、意味のある場所であるべきという考えから、最初は日本の食文化を伝える学食を目指すことになったんです。そこからさらに発展し、学食を“ダイニングラボ”として、大学の研究者たちや学生、関係する様々な方々とのコミュニケーションが生まれるような新しいプラットフォームを作ることになりました。
そうしてでき上がった「食堂コマニ」のコンセプトは、「つながる学食」「学べる学食」「東大の技術が活かせる学食」の3つ。
まず、日本の地域や人と人とのつながりを大切にすること。そして食堂を通じて日本の食をはじめとする、さまざまな文化や地域の素晴らしい生産者について学べる場を提供すること。さらに、東大が持ち得る知恵や技術を活用する機能も学食に取り入れていく。
玉田:東大の生産研には研究室が100くらいあるのですが、意外と横のつながりが少なく、ここで研究者同士がつながったり、小さい実習実験の場になったりしたら面白いということで、“ダイニングラボ”の構想が生まれました。普段はなかなか話せないような所長や教授たちと気軽に話せる場を作ることで、ただ単にごはんを食べに来るだけでなく、偶発的で自然な出会いが起きたり、何か新しいものに触れられたりするような場所を目指しました。
実際、学食内を見渡すと、食堂の椅子やテーブル以外に、全研究室を紹介する棚やモニターが見える。その前面には、カジュアルなキャンプチェアやローテーブル、座敷席も備えられている。
ここは主に、あらゆる分野の研究者や先生たちによる、ランチ中のプチトークイベントやイブニングセミナーに活用されており、ランチタイムコンサートなども開催されている。