<棋士の横顔・中村修九段>「藤井聡太竜王に勝つことが目標」還暦迎えても衰えぬ闘志
今期は竜王戦のランキング戦4組で準優勝し、本戦出場まであと一歩に迫る活躍でした。 竜王戦4組決勝の対局について「分かってはいたけど、大橋君(貴洸六段)はやっぱり強かった。本戦に出て、藤井竜王に挑戦したいという気持ちでやっていましたから悔しさはありました」と神妙な面持ちで語りました。
若手時代から受け将棋で、中終盤では対戦相手が読みにくい手を指すことから、「受ける青春」や「不思議流」の異名を取る中村九段。王将2期の実績があります。もともと、居飛車・振り飛車の両方を指しこなすタイプですが、近年は三間飛車の持久戦で囲い方を工夫するなど独自の指し方を確立しています。
本人は「攻めるのが得意じゃないから」と謙遜しますが、独自のスタイルを貫くことも容易ではありません。弟子の上村亘五段は「師匠はAI研究が深い若手棋士相手でも、中盤で形勢を損ねません。大駒の使い方がうまくて、経験をいかした攻防の組み立ては勉強になります。終盤も粘り強くて、長期戦を全く苦にしない。盤上での若々しさを尊敬しています」と話しています。
闘争心や探究心を持ち続けている中村九段。竜王戦七番勝負の晴れ舞台で対局している藤井竜王には特別な思いを抱いています。「藤井竜王は世間における将棋の認知度をぐんと高めてくださった棋士で、将棋に対して真摯(しんし)に向き合っています。ずっと年下の棋士ですが、尊敬する藤井竜王との対局は格別なものです」と熱く語ります。2021年1月の順位戦B級2組の藤井竜王との対局では、和服を着用して敬意を示していました。
今年の銀河戦でも藤井竜王と対戦している中村九段。「最上位の棋士である藤井竜王と対戦するには、かなり勝たないといけません。対局して、いつか藤井竜王に勝つことをひそかな目標にしています」と力強く語りました。(吉田祐也)