草津音楽祭が閉幕 クラシックの調べ、ファン魅了 グラミー賞歌手も
草津音楽祭は1980年に始まり、毎回テーマを設定して関連する作品をプログラムに取り入れてきた。今回は生誕230年を迎えたイタリアの作曲家、ロッシーニの作品を軸とした。ロッシーニといえばオペラで有名だが、音楽祭ではあまり知られていない小編成の室内楽曲やピアノ曲も取り上げ、新たなロッシーニ像を浮かび上がらせた。
海外の演奏家も3年ぶりに招いた。8月22日には米グラミー賞など数々の受賞歴があるオーストリア出身のメゾソプラノ歌手、アンゲリカ・キルヒシュラーガーさんが登場。情感あふれる歌声でドイツ歌曲を披露した。
草津夏期国際音楽アカデミー事務局長の井阪紘さんによると、キルヒシュラーガーさんが日本でリサイタルを行うのは初めてだといい、県内外から多くの観客が訪れた。埼玉県の40代女性は「こんなに近くで世界的なレベルの歌を聴けてよかった。娘も連れてきたが、夢中になって聴いていた」と話した。
草津音楽祭は正式名称が示すようにアカデミー(講習会)とフェスティヴァル(演奏会)からなる。国内外の優れた演奏家から直接指導を受けられるアカデミーについて、井阪さんは「音楽大学に通う学生が、普段は習えない先生のクラスを自由に選んで学べる」と意義を強調する。
また、3年ぶりの通常開催を無事に終え、「コロナ禍でどれだけお客さんが戻ってくるか心配だったが、若手を育てるという音楽祭の趣旨に共感してくれるファンが多く来てくれてうれしい」と語った。【西本龍太朗】
◇来年に向け新たな可能性を
◇草津音楽祭音楽監督・西村朗さん
日本を代表する音楽祭の一つとして復活、再出発できた。また、3年ぶりにアカデミーを開催できたことが一番大きい。コロナ禍のため、音楽を学ぶ若い人たちは研さんを積むことにさまざまな不自由があったと思う。それを乗り越え、伸びやかで、フレッシュで、活力ある演奏をしてくれたことがうれしい。
演奏会には連日、たくさんのお客さんが来てくださった。お客さんの「熱心度」や「期待度」というものも非常に高かった。コロナ禍の中での開催に「頑張って」という気持ちをひしひしと感じた。
音楽祭をチャレンジングに再開したいとの思いから、ロッシーニや(フランスの作曲家)サンサーンスを中心とした他に類を見ない新鮮なプログラムを組めた。世界的な演奏家も参加してくれて、手応えを感じている。
また来年に向け、新たな可能性を探っていく。コロナ禍が収束して人々のコミュニケーションの密度が高まり、相互に刺激し合える音楽活動が世界に広がればいい。【聞き手・西本龍太朗】