サンローランと国立新美術館が共催!蔡國強、8年ぶりの大規模個展は「AI作品」も登場
蔡國強(ツァイ・グオチャン)
1957年中国福建省泉州市生まれ。上海戯劇学院美術学部を卒業後、’86年12月、のちに妻となる画家の呉紅虹(ウ・ホンホン)とともに来日。’95年渡米。’99年ヴェネチア・ビエンナーレ国際金獅子賞受賞。2008年北京オリンピック開閉会式で視覚特効芸術監督を務める。グッゲンハイム美術館やプラド美術館、ウフィツィ美術館など世界各地で個展を開催。いわき回廊美術館館長。
床に置かれた7枚の鏡パネルを見つめる蔡の眼光の鋭さ。型紙の位置や散布する火薬の量、導火線の長さと角度など、準備に準備を重ねたうえで着火する。わずか数秒間の爆発・燃焼に賭ける錬金術師の佇まいに、周囲のスタッフも取材チームもただ沈黙
中国に生まれ、日本の現代美術界で活躍し、1995年にニューヨークに拠点を移してからは、世界の注目作家と肩を並べて数々の国際ビエンナーレに登場。世界各地の記念行事や開幕式を彩る大掛かりな爆発イベントでも知られる蔡國強は、文字どおりアート界の大スターだ。
とはいえ、特定の有力画廊に所属しているわけではない。90年代後半に世界の表舞台に飛び出した、中国を拠点とするアーティストたちとも一線を画している。実際、彼らの作品の多くが、自国の社会問題とも関わるメッセージ性の強いものであるのに対し、蔡のアートの中心的な素材は中国古来の火薬であり、水墨画や屛風絵を思わせるフォーマットも伝統的だ。
しかし、6月29日から東京の国立新美術館とサンローランとの共催で開催される個展『宇宙遊―<原初火球>から始まる』には、過去の代表作だけでなく、新しい試みや実験的な作品が登場するという。ニュージャージー州の片田舎に構えた蔡のスタジオでは、まさに多彩な実験が始まっていた。