知っていたらすごい!「侍」のおねだん、いくらか知っていますか?
京都では値段が前もって知らされないことも多く、往々にして不思議な「おねだん」設定に出くわす。京都を京都たらしめているゆえんともいえる、京都の 「おねだん」。それを知ることは、京都人の思考や人生観を知ることかもしれない。
侍のおねだんはおいくらだろうか。
2008年に大阪の新歌舞伎座で演出をする機会があった。それまで若い世代には縁のないところだと思っていたが、幅広い客層が1ヵ月で5万人訪れる劇場というのはほかにないものであり、〈巨大な遊び場〉としておおいに楽しんだ。なにより演出家としては、「かならずしも演劇に興味のない人にも楽しんでもらえるお芝居作り」の大切さを学んだのだった。
ところで、舞台に興味のない人も含めて、世代を超えて誰もが共感できるお芝居として、親子の情愛、大切な人とのつながりや別れなどのテーマを描く時代劇が好まれる。テレビでは消えゆく時代劇だが、いまだ商業演劇では多くの観客を集める。そして、時代劇の花と言えば、チャンバラだ。
私が新歌舞伎座で演出をした際に、「劇団とっても便利」の団員も数人出演させていただいた。ミュージカル劇団ゆえ、洋舞はできるのだが、いかんせん和物に弱い。というわけで、殺陣=チャンバラを習いたいということになった。
団員総出で殺陣の教室を探したが、「京都では殺陣の教室はないそうです。大阪はあるのですが、殺陣とエアロビクスを融合させた“タテロビクス”みたいなのしかないんです。みんな、『殺陣教えてくれる教室は東京にしかないんとちゃうか? 』と言っています」とのこと。そうか、役者の数も多い東京ならたくさんあるのか──。
と思っていたら、別の機会にある大劇場で演出をさせていただいたとき、プロデューサーがおっしゃった。「ここだけの話、今回は予算がなくて、殺陣師は京都の偉い先生は呼べませんでした」。えっ? 京都に殺陣のいい先生がいて、しかもそのおねだんは高くて手が出ない? 聞いていたことと違うではないか。