ティルマンスから恵比寿映像祭2023、マツモト建築芸術祭まで。今週末に見たい展覧会ベスト9
1980年代よりパーティーなど若者文化を題材にした写真作品を発表してきたドイツ人のアーティストであるヴォルフガング・ティルマンスの個展「Moments
of life」が、2月2日にエスパス ルイ・ヴィトン東京で開幕した。
パリのフォンダシオン
ルイ・ヴィトン(FLV)が主催する「Hors-les-mur(壁を越えて)」プログラムの一環として開催される本展では、FLVに収蔵されている30点以上のティルマンス作品のなかから厳選された21点が展示。展示作品は、ポートレート、静物画、風景画といった3つのジャンルに大きく分けられる。
身の回りの何気ない人物やモノなど日常の繊細な美をとらえ、写真やイメージの創造の境界線を拡張し続けるティルマンスの制作をまとめて堪能できる機会だ。
会期:2023年2月2日~6月11日
会場:エスパス ルイ・ヴィトン東京
住所:東京都渋谷区神宮前5-7-5
開館時間:11:00~19:00
休館日:ルイ・ヴィトン 表参道店に準ずる
料金:無休
ヒグチユウコの世界観に浸る。「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL END」(森アーツセンターギャラリー)
空想と現実を行き交う発想と独自のタッチで愛される画家・絵本作家のヒグチユウコ。その世界観を堪能できる大規模個展「ヒグチユウコ展 CIRCUS FINAL
END」が森アーツセンターギャラリーで始まっている。
全国9会場を経て東京に帰還した本展には、2019年から全国を巡回してきた約500点と、これまで紹介しきれなかった作品も合わせた約1000点が集結しており、その画業を一度で感じられる空間だ。『ふたりのねこ』(2014年、祥伝社)『ギュスターヴくん』(2016年、白泉社)『ほんやのねこ』(2018年、白泉社)といった絵本作品の原画や書籍の装画のほか、GUCCIをはじめとする企業とのクリエイションの数々を見ることができる。
誰かと来てもひとりでも楽しめ、ヒグチユウコの世界観に惚れこんでいる人もまだ知らない方もきっと虜になる。そんなサーカスの世界をぜひ会場で楽しんでほしい。
会期:2023年2月3日~4月10日
会場:森アーツセンターギャラリー
住所:東京都港区六本木6-10-1 六本木ヒルズ森タワー52階
開館時間:10:00~18:00(金土~20:00) ※入館は閉館の30分前まで
休館日:会期中無休
料金:一般・大学生・専門学校生 2000円 / 中学・高校生 1600円 / 小学生 600円 / 未就学児 無料
「おじさん」を通じて広重の魅力を再発見。「広重おじさん図譜」(太田記念美術館)
風景画の名作を数多く描いた絵師・歌川広重(1797 ~
1858)の絵に登場する「おじさん」に着目し、その魅力を眺めてみようというユニークな展覧会「広重おじさん図譜」が、太田記念美術館でスタートした。
展示は「いろんなおじさん」「おじさんたちの狂宴」「街道の旅とおじさん」「物語の中のおじさん」「おじさんがいっぱい」の5章構成。前後期合わせて約150点の作品が出品される。章構成からもわかる通り、主役はすべておじさんだ。
また、広重に加えて葛飾北斎や歌川国貞、歌川国芳、小林清親といった浮世絵師たちが描いたおじさんたちも「みんなのおじさん」として紹介。絵師によって異なる個性が描かれたおじさんたちや、これまでに気づいていなかった広重の魅力をあらためて味わってみてはいかがだろうか。
会期:2023年2月3日~3月26日(前期 2月3日~26日、後期 3月3日~26日)※前後期で全点展示替え
会場:太田記念美術館
住所:東京都渋谷区神宮前1-10-10
電話番号:050-5541-8600(ハローダイヤル)
開館時間:10:30~17:30 ※入館は17:00まで
休館日:月、2月28日~3月2日
料金:一般 800円 / 大学・高校生 600円 / 中学生以下無料
アートと技術との対話の可能性を探る。「恵比寿映像祭2023」(東京都写真美術館ほか)
「映像とは何か」を問い続ける国際フェスティバル「恵比寿映像祭2023」が、3年ぶりの大規模開催を迎えた。今年の総合テーマ「テクノロジー?」をもとに、アートと技術との対話の可能性について考察する。
今年は16の国と地域から125組、146名の作家が参加。写真や映像、ビデオ、アニメーションなど、高精細で情報量の多いイメージの制作がテクノロジーによって生み出され日常の一風景となった21世紀において多種多様な映像表現の実践を検証しながら、「映像とは何か」という問いをより深めていくことが目的だ。
また、今年より「コミッション・プロジェクト」も実施され、日本を拠点に活動する新進アーティストを選出。今回、国内外の審査において荒木悠、葉山嶺、金仁淑(キム・インスク)、大木裕之の4名が選出され、こうした制作委嘱した映像作品もチェックしてほしい。
会期:2023年2月3日~2月19日(15日間)
会場:東京都写真美術館 / 恵比寿ガーデンプレイスセンター広場 / 地域連携各所ほか
開館時間:10:00~20:00(2月19日~18:00) ※入場は閉館の30分前まで
休館日:月
料金:入場無料 ※一部のプログラムは有料、オンラインによる日時指定予約推奨
コレクションの舞台裏も紹介。「タグコレ 現代アートはわからんね」(角川武蔵野ミュージアム)
ミスミグループ創業者の田口弘が集めた世界各地の現代アートのコレクションを紹介する展覧会「タグコレ
現代アートはわからんね」が、2月4日より角川武蔵野ミュージアムで開催される。
田口はミスミの社長在職時にアメリカのポップアートを中心とした「ミスミコレクション」を築き、現代アートの企業コレクションとして日本を代表する先駆けとなった。その後に開始した個人コレクションでは、世界各国あるいは日本国内にも対象を広げ、立体・写真・映像など、素材・形態も幅広く収集。2013年より長女の田口美和が運営に参画し、展覧会の開催とコレクションの拡充に努めている。
本展は、そんなタグコレの作品を通して、田口がアートとの出会いで経験した驚きや発見などを追体験できるもの。アンディ・ウォーホルやキース・ヘリング、デイヴィッド・ホックニーから、奈良美智、会田誠、カラ・ウォーカーまでの作品やコレクションの舞台裏を紹介することで、様々な角度から楽しめる内容だ。
会期:2023年2月4日~5月7日
会場:角川武蔵野ミュージアム
住所:埼玉県所沢市東所沢和田3-31-3
開館時間:10:00~18:00(金土~21:00) ※入館は閉館30分前まで。最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:第1・3・5火曜日
料金:一般(大学生以上)2000円 / 中高生 1500円 / 保護者同伴の小学生・未就学児は無料
文化庁メディア芸術祭の25年の歩みを振り返る。「A Quarter-Century of Japan Media Arts
Festival」(寺田倉庫B&C HALL / E HALL)
文化庁メディア芸術祭の25周年の節目にあたり、企画展「A Quarter-Century of Japan Media Arts
Festival」が、2月4日~14日の会期で東京・天王洲の寺田倉庫B&C HALL / E HALLで開催される。
文化庁は、メディア芸術の創造とその発展を図るため、アート、エンターテインメント、ア
ニメーション、マンガの4部門において優れた作品を顕彰するとともに、受賞作品の鑑賞機会 を提供する「文化庁メディア芸術祭」を1997
年度より開催してきた。本展では、歴代受賞作品のなかから社会やテクノロジーの変化、メディア芸術の表現の多様性を感じられる作品群の展示を通し、文化庁メディア芸術祭の25年の歩みを振り返る。
第1回開催当時、コンピュータやインターネットが一般に認知され始めた時期の作品から、日常生活で親しまれる作品や、社会に実装される技術を使った作品まで、“時代を映す”受賞作品群を堪能してほしい。
会期:2023年2月4日~2月14日
会場:寺田倉庫B&C HALL / E HALL
住所:東京都品川区東品川2-1-3
開館時間:11:00~19:00(金土~20:00) ※最新情報は公式ウェブサイトにて要確認
休館日:2月7日
料金:無料
名建築とアートの競演を楽しむ。第2回「マツモト建築芸術祭」(松本市内約20ヶ所)
長野県松本市に点在する名建築の価値を再認識し保存への機運につなげること目的に、昨年初めて開催された新しい芸術祭「マツモト建築芸術祭」。その第2回目が、2月4日~26日に行われる。
建築物とアート作品を対比・融合・共鳴させることで、化学変化を起こし、新しい視点で「松本」を体感してもらうことを試みる同芸術祭。今年は19会場に17人のアーティストが参加し、新たな会場として9ヶ所が加わった。参加作家は井村一登、井田幸昌、ドローグ・デザイン、飯沢耕太郎、後藤宙、MISSISSIPPI、青木悠太朗、河合政之、福井江太郎、中島崇、ヨーガン・アクセルバル+amachi.、村松英俊、白鳥真太郎、ステファニー・クエール、鬼頭健吾、CALMA
by Ryo Okamoto。
なお有料会場のほか、屋外など無料会場も設置。街歩きしながら、松本の街並みをかたちづくる名建築とアートの競演を楽しんでみてはいかがだろうか。
会期:2023年2月4日~26日
会場:松本市内約20ヶ所
大竹伸朗の40年以上におよぶ創作活動を総覧。「大竹伸朗展」(東京国立近代美術館)
日本を代表する現代アーティストのひとりであり、つねに熱いエネルギーを放し続けている大竹伸朗。その大規模な回顧展「大竹伸朗展」が、2月5日に幕を閉じる。
1980年代初めから現在まで第一線で活躍しており、絵画や版画、映像、インスタレーション、巨大な建造物など、多岐にわたる制作で知られている大竹。本展では大竹の40年以上におよぶ創作活動を約500点の作品で振り返り、国際展に出品された作品を含む膨大な作品群を7つのテーマに基づいて構成している。
「自 / 他」「記憶」「時間」「移行」「夢 /
網膜」「層」「音」といった7つのテーマはゆるやかにつながっており、行きつ戻りつ、作品を鑑賞することができる。なかでも、大竹が2019年以降取り組む「残景」シリーズの最新作《残景
0》(2022)や、東京国立近代美術館のファサードに取り付けられた《宇和島駅》などの作品にとくに注目してほしい。
会期:2022年11月1日~2023年2月5日
会場:東京国立近代美術館 1F企画展ギャラリー、2Fギャラリー4
住所:東京都千代田区北の丸公園3-1
電話番号:050-5541-8600
開館時間:10:00~17:00(金土~20:00) ※最終入館は閉館30分前まで
料金:一般 1500 / 大学生 1000円 / 高校生以下無料 ※本展観覧料で入館当日に限り同時開催の所蔵作品展「MOMATコレクション」も観覧可
パリ・オペラ座の歴史的な意味を明かす。「パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂」(アーティゾン美術館)
フランスを代表する歌劇場「オペラ座」。作曲からバレエ・ダンス、そして今日まで続く舞台演出に至るまで、「総合芸術」の観点からオペラ座の魅力を紐解く展覧会「パリ・オペラ座 響き合う芸術の殿堂」が、2月5日に閉幕する。
パリ・オペラ座は、ルイ14世によって1669年に設立された王立音楽アカデミーを前身とし、350年以上の間、台本作家や作曲家、美術家に、芸術的な進展や技術的な革新を可能にする表現をつねに注文してきた。1989年にバスティーユ歌劇場(オペラ・バスティーユ)が完成し、現在2つの劇場でバレエ、オペラの古典から現代作品までを上演している。
本展は、パリ・オペラ座の誕生から歴史をたどり、現代における舞台美術までを紹介する全6章で構成。フランス国立図書館やオルセー美術館などの協力のもと全273点の作品が展示されており、パリ・オペラ座の魅力を「総合芸術」的な観点から浮き彫りにしながら、芸術的、文化的、社会的な視野からその歴史的な意味を明らかにする。
会期:2022年11月5日~2023年2月5日
会場:アーティゾン美術館
住所:東京都中央区京橋1-7-2
電話番号:03-5777-8600
開館時間:10:00~18:00(金~20:00) ※入館は閉館の30分前まで
料金:当日チケット(窓口販売) 2000円 / ウェブ予約チケット 1800円 / 学生無料(要ウェブ予約)