木村多江「背負い投げされた気分」穏やかな俳優が思わず興奮した展覧会
【女子的アートナビ】vol. 288
特別展「東福寺」では、京都・東福寺が所蔵する膨大な寺宝のなかからセレクトされた国宝や重要文化財指定のお宝など、約150件をまとめて展示。鮮やかな仏画や巨大な仏像、書画など、日本文化の魅力をたっぷりと味わえます。(会期中、展示替えがあります)
東福寺は、鎌倉時代前期に摂政・関白を務めた九条道家(くじょうみちいえ)が発願し、開山として円爾(えんに)を招いて創建された禅宗寺院です。
応仁の乱などの戦火を免れた貴重な文化財を数多く所蔵。国宝7件、重要文化財98件、合計で105件もあり、まさに文化財の宝庫といえるお寺です。
東福寺初となる大規模展覧会で音声ガイドを務めるのは、女優の木村多江さん。今回、本展の見どころなどをお聞きしてきました。
――展示をご覧になって、いかがでしたか?
木村さん 禅宗の美術は硬いのかなと思っていたら、想像を超えて楽しいものがいっぱいありました。
例えば、《五百羅漢図》のところには四コマ漫画があり、その漫画にタイトルまでついていて、ストーリーもわかりやすく、ポップで楽しくなりました。作品そのものも色彩が豊かで美しく、描かれている羅漢のお顔も近所にいる人のような雰囲気で、身近な感じがします。
また、《虎 一大字》という書の作品も、虎の絵のような文字のような、あるいはカメレオンにも見えます。禅宗の教えにある「人の心次第」を伝えようとしていたのかもしれないですね。いろいろ自由に解釈ができ、想像が膨らみました。
――木村さんは長年、NHKBSプレミアム「美の壺」でナレーションをされ、日本の文化にも精通されています。日本の美術工芸の楽しみ方を教えていただけますか?
木村さん 日本には、すばらしい作家や職人の方々がたくさんいて、世界に誇れる技術があります。今では再現できないような先人たちの技術もあり、そんな方々の技を発見できることが楽しいです。
例えば、今回の展覧会で見られる鎌倉時代の《二天王立像》も、あんな大きな仏像を寄木でどうやってつくったのだろうか、とびっくりします。今のようにデジタル技術がない時代、全体像をどのように考えてつくっていくのか、想像するとすごく興奮しちゃいます(笑)。
こんなにすごい作品が日本にあるんだよ、と私はみなさんに言いたいです(笑)。昔はどんなふうにつくったのか、どんな人がつくったのか、と想像しながら見ていただきたいですね。
――木村さんご自身にとって、美術に触れることで何か影響はありますか?
木村さん お芝居は、アウトプットのことが多いので、美術展に行っていろいろ拝見すると、作者の精神や魂に触れられる気がして、それがインプットになり、自分を鼓舞することにもなります。
想像力が膨らむような感動を、見ている人に与えることができる美術作品に触れると、私もそうなりたいと目指すものができます。美しいものやびっくりする作品を見ると、刺激になり、活力にもなります。