いきものがかりの水野良樹さんが敬愛する「小谷正一」氏とは?
水野良樹さん(以下、水野):そうですね。一応、という感じではあるんですけど。
澤本嘉光さん(以下、澤本):そこは『日経ビジネス電子版』との、まさに接点になるんじゃないかと思って。
――設立は新型コロナウイルス禍最中の2020年。どういう経緯で設立にいたったのでしょうか。
水野:この対談の中編でお話した「放牧(活動休止)」の話とかぶるのですが、30代半ばを過ぎて、これからどう人生を歩んでいこうかとメンバー内で語り合ったときに、この先、自分たちだけの考えでは、物事が進んでいかない、その状況を実感したんです。メジャーデビュー後、10周年を経て周囲を見回すと、本当に多くの方々が僕たちの周りに集まってくれていました。音楽の仲間をはじめ、スタッフの方々、全国のイベンターの方々など、さまざまな方々が関わっておられて、自分たちの思いだけではもう物事が進まないし、進めちゃいけない、と。
――サードアルバム「My song Your song」(08年)から「FUN! FUN! FANFARE!」(14年)まで5枚連続でオリコンチャート第1位。最初のベストアルバムはミリオンセラー達成、メジャーデビュー10周年に出したベストアルバム「超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~」も大ヒット。売れれば売れるほど、責任も重くなっていったことでしょう。
水野:自覚すればするほど、その責任を背負ったまま、前に進んでいくのは難しいと思いました。もっとフットワーク軽くやっていく形に移行したい。自立したい。意図してそう持っていかないと、きっと長い間は続けられないし、先々で後悔する瞬間が来るのでは、という話を3人でしていたんです。
――でも、所属事務所を離れるって、難しいことなのでは?
●「独立」するって大変ですか
水野:僕たちはデビュー当時からキューブという事務所に、15年にわたってお世話になっていました。今さら「独立したい」なんて言ったら怒られるかな、と最初は思いましたね。でも、僕たちの正直な考えや危機感を伝えたら、事務所はそれを受け入れて、送り出してくれたんですね。僕らはすごく感謝しています。
――折しも同時期に、芸能界では俳優やタレントが独立する動きが、いろいろと出てきました。
水野:いや、びっくりしました。みんな、事務所を出ていくのか、独立するのか、大丈夫なのか、って?
――自分は出ていったのに(笑)。
水野:本当ですよね(笑)。もちろん独立で大変な部分はたくさんあります。どれだけ前の事務所の皆さんが、僕たちを守り、育ててくれたか。自分で業務を担うようになって、より痛感しています。でも、自分たちの責任で自分たちの人生をコントロールしていく。その判断を自分たちで行える、というのは大事なことだと思っています。そこはずっとブレていません。
――ミレニアル世代、Z世代と、今は大きな会社に就職した人も、ためらいなく、どんどん独立をしていく時代にもなっています。
水野:澤本さんは、まだ独立していないんですか。
澤本:たぶん僕はしないと思います。
水野:確かに「僕は独立しません」って、ずっと言い続けていましたものね。
澤本:僕の場合は会社というものがあって、そこで出会いの場を用意してもらっているからこそ、映画をやりませんかとか、小説をやりませんか、ラジオ番組を、対談を、ドラマを、◯◯を……と言っていただいてきた感はあります。僕自身どっちかというと、「俺はこれできるからよろしく」みたいなことがまったくできないたちなんで。受け身というか。
水野:いや、そうやって控えめを装って(笑)。