『「カムカムエヴリバディ」上白石萌音の衝撃場面 演出側は「試行錯誤を続けた」』へのユーザーの意見まとめ
【写真】連続テレビ小説「カムカムエヴリバディ」第38話。我孫子にて。あるものを目撃するるい(古川凜)
物語の転換点となる重要な場面。演出の安達もじり氏は「お二人に体当たりで演じていただいて、圧倒されながら撮った」と話す。
このドラマは、安子(上白石萌音)と娘・るい(深津絵里)、孫・ひなた(川栄李奈)の3世代の100年にわたる物語。安子が交通事故で、るいの額に深い傷を負わせてしまったことが重大な問題として存在し、安子とるいが別々に暮らすかどうかが物語の核の一つだ。安子とるいの別離の時がいずれ訪れそうな暗示は過去の放送の中にあったものの、決定的な要因が描かれていなかった。
安達氏は「36回(20日放送)、37回(21日放送)、38回(22日放送)の3話で描く必要があった。この3話は、撮影していたものを、1話15分ごとに編集するのではなく、45分ドラマとして編集し、区切りの良いところで切ってみた。すると、誰が悪いかということではなく、ちょっとした掛け違いの積み重ねで、あのような結末に至ったことが良く分かった。どの場面を強く見せ、どの場面を引いて見せるか、考えながら編集し、最後の最後に音楽を入れるまで試行錯誤を続けた」と明かす。
るいが安子に決定的な言葉を告げる場面は、実は、そこまでの経過を描いた場面の数々より前に撮影したものだという。
安達氏は「これで合っているのか?ここまでたどり着くのか?と考えながら撮った。とても強いシーンなので、撮り終えた時に『これでヒロインが変わっていくんだな…』と感じた。やり過ぎたか?という不安もあったが、結果的に、編集で、あのトーンを目指して積み重ねてゆき、良い意味で強いシーンになったと思う」と話す。
それにしても、あの場面の衝撃は極めて大きい。ヒロインは安子から、るいに変わり、1962年の大阪に舞台を移すが、22日の放送で起きた「現実」を受け入れるのがなかなか難しい。るいからあのような言葉を浴びせられた安子は、その後どんな思いで生きていくのか、どんな暮らしをしていくのか…。それが何よりも気になる。
この100年物語は総じて悲劇ではないだろう。だから、るいが安子の真の思いを理解する時がやがて訪れるに違いない。安子が救われる日が来るかもしれない。そう考えると、あの衝撃的な場面も、ひとつの伏線ということになる。朝ドラ史に残るであろう、強烈で壮大な伏線だ。
◆牧 元一(まき・もとかず) 編集局デジタル編集部専門委員。芸能取材歴30年以上。現在は主にテレビやラジオを担当。