「ツタンカーメン王の墓」発見から100年目の“不都合な真実”
ガーディナーはその魔除けを、カイロにあるエジプト博物館の館長だったイギリス人のレックス・エンゲルバックに見せた。すると、それはまぎれもなく墓から持ってきたものだと言われ、ガーディナーはうろたえる。その魔除けは墓から出てきたほかのものと一致していたが、それもそのはず、すべて同じ鋳型から作られたものだったのだ。
ガーディナーはすぐさまカーターに手紙を送り、エンゲルバックによる不都合な意見を引用した。
「貴殿が小生に見せたウェヘムの魔除けは、間違いなくツタンカーメンの墓から盗まれたものだ」
「これほど厄介な立場に置かれてしまったことを深く遺憾に思う」とガーディナーはカーターに書いた。だが、「貴殿から魔除けをもらったとは当然ながら、エンゲルバックには言わなかった」ともガーディナーは書いている。
これらの手紙は個人所蔵だが、オックスフォード大学出版局から近刊予定の『世界を変えたツタンカーメンとその墓』で公開されることになる。
その著者であり、米ロングアイランド大学の優れたエジプト学者であるボブ・ブライアーは「オブザーバー」紙の取材に応え、カーターが財宝を盗んだのではないかという疑いはずっとささやかれてきたが、「いまや疑いの余地はない」と言う。