なぜフランク・ロイド・ライトや柳宗理が? 上島珈琲店に名作デザインが並ぶのは、あの名ホテルの影響でした。
関東を中心に、北海道から沖縄まで幅広く店舗展開している〈上島珈琲店〉。その多くの店舗に、“モダニズム建築の3大巨匠”の一人、フランク・ロイド・ライトによる名作照明《タリアセン》や《ROBIE 1》が使われているのをご存知だろうか。そのほかにも柳宗理によるスツールや食器など、そこかしこに名作デザインが散見され、またそれぞれの店舗を見比べてみると、空間デザインや用られている家具や照明に変化がつけられていることがわかる。
チェーン店であれば画一的なデザインにすればコストの上でも効率的だが、〈上島珈琲店〉の場合はそうではない。その空間づくりについて、多くの店舗デザインを手掛ける〈ユーシーシーフードサービスシステム株式会社〉のデザイナー・北川雄康に話を聞いた。
「実は初期の店舗デザインのコンセプトを決めるうえでベンチマークしていたのが、フランク・ロイド・ライトが手掛けた〈帝国ホテル〉の初代本館なんです」(北川さん)
そもそも〈上島珈琲店〉は、2003年に神田神保町に1号店をオープン。ネルドリップ方式の抽出にこだわるとともに、一度抽出したコーヒーをさらに新たなコーヒー粉で濾過する贅沢な「ダブルネルドリップ」方式によるミルク珈琲が人気を集め、店舗はすぐさま全国に広がっていく。
「〈上島珈琲店〉はもともと、“アクティブシニアがくつろげる場所を提供したい”という想いからスタートしました。一号店がオープンした2003年あたりは、シアトル系のコーヒーショップが多くなり、一方で従来の喫茶店が少なくなったことで、いわゆる“アクティブシニアのおじさんたち”の居場所が少なくなりつつある時期でした。そうした世代の方々もくつろげる、上質かつ日本の喫茶文化を継承するコーヒーショップとして、〈上島珈琲店〉は誕生しました」