藤井光の日本の戦争絵画を巡るインスタレーションが、ボックス&インスタレーション作品としてオンラインで公開へ
による日本の戦争絵画をめぐるインスタレーション作品(美術品の運搬や展覧会で使われた廃棄物を回収し、実寸大の戦争絵画として構成されたもの)。それらをすべて解体・組み直して制作したボックス&インスタレーション作品《日本の戦争美術
1946》全153点が、オンライン上のクラウド展覧会として公開される。会期は4月26日~5月31日。
本作は、占領期に米国陸軍通信隊が旧東京都美術館で記録した戦争画アーカイブ・フィルム全153点を藤井が改めてデジタル顕微鏡で撮影。それらの映像作品と、当時の米国側の逡巡を公文書から掘り起こした音声作品から構成されるものだ。
戦争画はプロパガンダか、はたまた芸術作品なのか。藤井は正体不明の戦争画を過去から掘り起こすことで、米国の視線をなぞらえるとともに、戦争への参加を余儀なくされた芸術家たちの狂喜の筆跡を反復する。そんな本展は、第2次世界大戦からアジアを再び戦場化させていった冷戦を振り返りながら、その歴史に連なる現在進行中の戦争をとらえようとする試みとなる。
また、大規模インスタレーション作品が展示終了後にゴミとなる(消費される)ケースが多いことに問題意識を抱えていた藤井。ボックス&インスタレーション作品となる本作は、作品が未来に回復されうるエコシステムを模索したうえでたどり着いたかたちでもあるのだという。
本展の開催に際し、藤井は次のようにコメントを寄せている。「世界を冷戦が分断していく1946年、米国占領軍は日本の非軍事化にあわせて、第2次世界大戦中の日本軍によるアジア侵攻を主題とした絵画を接収していった。後年、東京国立近代美術館に収蔵される日本最大級の戦争画コレクションとなる作品群は、戦争を美的な現象として宣伝するプロパガンダなのか、あるいは美術的価値のある芸術作品なのか、敗戦国の戦争美術に生じる多義性を前に米国は迷
うこととなった。継続された戦争はいつ終わるのか。その終わりを未だ知らない人間の未来に正体不明の戦争画をつないでいく(リリースより一部抜粋)」。