川内倫子の日々 vol.27「ブーメラン」
なんと自分はどうやら当時、その方に説教のようなものをしたらしい。え、そうだったかなとおぼろげな記憶を辿ると、そのときの詳細を聞くうちにだんだんと思い出してきた。
何を言ったのか内容ははっきりとは覚えていないのだが、わりと強めな言葉でインタビュー内容の修正をお願いしたような気がするということは思い出した。
あのときはピリピリしていてすみません。。と謝ると、いえいえ、あのときの経験がいまの自分をつくっているので、とあたたかい言葉をいただいた。
そのように言ってもらえて助かったが、若かりし傲慢な自分と対面したような気持ちになり、恥ずかしくなった。20年くらいまえの自分、いま振り返ると、気負っていたし焦っていたし、自分を守ることしか考えていなかった。
思い返すとそういった類のことはいくつもある。ただそういった記憶は普段蓋をしてなかったことにしているだけで、現在の自分が正気で向き合うといたたまれない。
ただ、だからこそ、あのときにしかつくれない作品もあったし、それはそれで仕方のないことではあるのだが。
ではいまの自分が誰に対しても余裕のある対応ができているのかと問うと、そういうわけではなく、相変わらず短気できつい物言いをすることもよくある。
ただ感情に任せて出た言葉は、あとからブーメランとなって自分に刺さることはこれまでの経験で多々あるから、なにか言うまえにひとつ深呼吸したり、一晩置いてみたりと少し間を空けることを心がけるようにはなった。
深呼吸がひとつでは足りなくて、苦い気持ちになることもあるが、以前に比べるとそういった経験は少なくはなってきた。以前が多すぎたということかもしれないが。
何年か前からアンガーマネジメントという言葉をよく聞くようになったが、初めてその言葉に触れたとき、自分に必要なことだとしみじみ思った。ぱっと火がついた怒りの感情をそのまま他者に吐き出してもいいことはなにもない。