大阪IRの作品画像無断使用問題。どうすれば防げたのか? 注意すべき点は?
奈良本人による無断使用を指摘するTweetが発端となったこの件。事業者のMGMリゾーツは「当時の権利処理の状況等につきましては引き続き調査中」としながらも「しかるべき承諾を得ていない可能性が高い」と認めており、当該資料は削除された。
また吉村知事も、4月18日には記者会見において、「美術家の奈良さんと村上さんには謝罪を申し上げます。本当に申し訳なかったと思います」と謝罪しつつ、「美術家の作品を扱う場合には利用許諾を含めた手続きに則るべきで、不十分だった。弁解の余地はない。事業者には今後誠実に対応するように指示した」とコメントしている。
今回の件はどうすれば防げたのだろうか? 著作権などアートに関する法律に詳しい木村剛大弁護士は、「今回の資料が当初から公表する予定のものであったのか経緯は不明だが、たとえ内部資料であっても無断使用は著作権法上問題になる」としたうえで、「そもそも著作権に関する基本的な認識と、アーティストやアート作品に対する敬意が根本的に必要だ。政策的に賛否両論あるような資料に作品を利用するのであれば、なおさらセンシティブに対応するべき」と語る。
いっぽうで、大規模建築のパースに美術作品のイメージが使用されること自体は決して珍しいことではない。こうした資料などにおいてアート作品を使用しようとする際には、どこに注意すればよいだろうか?
「利用許諾が取れていれば当然ながら問題はない。ただし、著作権とは別に、著作者人格権(=著作者のこだわりを保護する権利)のひとつである同一性保持権や名誉声望権に関しては配慮しなければならない。とくに、作者が意図しない画像が作品と組み合わされたり、作品が特定のメッセージと結びついたりする利用方法については一段と配慮が必要だ。音楽分野ではCM利用などがあるため著作者人格権に配慮する慣行が確立されているが、美術分野ではこのような認識が浸透しているとはいえない状況にある」。
またアート作品などは著作物の保護期間が満了し著作権が消滅すれば「パブリック・ドメイン
」となるが、こうした場合においても、著作者人格権を侵害する行為をしていいわけではないので、とくに注意が必要だ(*)。
*──著作権法は、著作者の死後も著作物を公衆に提供、提示する場合、著作者が存しているなら著作者人格権の侵害になる行為をしてはならない、と定めている(著作権法60条本文)。もっとも、死後の著作者人格権に関する請求ができるのは、死亡した著作者の「配偶者、子、父母、孫、祖父母又は兄弟姉妹」までとなっている(著作権法116条1項)。そのため、これらの者が死亡すれば請求権者がいなくなることで事実上、著作者の死後の著作者人格権の保護も終了する。