6・7月に読みたいアート本。艾未未、坂本龍一、マティス、ボリス・グロイス、毛利眞美、ものづくりとジェンダー、著作権
水声社 7000円+税 5月25日発売
アーティストとして国際的に活躍しながら、つねに時代の変化や社会の在り様を見据えてきた艾未未(アイ・ウェイウェイ)。その全貌に迫る500ページ超えの大著。北京オリンピック、四川大地震、難民問題、香港民主化運動、新型コロナウイルスのパンデミック等を題材にした作品群を読みとき、多角的な視点で作家の思索と世界観を探る。筆者が2011~13年に行った艾未未のインタビューも収録。
高見澤 たか子 著 堂本右美 編
東京書籍 1800円+税 5月24日発売
毛利眞美といういままであまり語られてこなかった画家の評伝。毛利元就の末裔の一族に生まれ、1950年に戦後初の女性留学生として渡仏。欧州で名画を見て絵画を学び、帰国後は1953年に資生堂ギャラリーで個展を開催……とデビューまでの経歴はじつに華々しい。転機となるのは画家・堂本尚郎との結婚だ。国際的に評価の高まる堂本を夫に持ち、女性、妻、母であることが画家としてのキャリアを築くうえで難しさを生んでいく。現在、女性アーティストの歴史的な見直しが進んでいるが、本書もそうした流れのなかで読まれる一冊だろう。編者は娘であり画家である堂本右美。
山崎明子 著
人文書院 4500円+税 5月26日発売
視覚文化論、美術制度史、ジェンダー論の研究者で、手芸とジェンダーに関する著書などを執筆してきた著者による新刊。社会で周縁化される「やりがいのあるものづくり」の言説に潜むジェンダーの問題とは。学校での家庭科、戦時下における針仕事の動員、戦後の手芸ブーム、伝統工芸における女性職人、刑務所での工芸品作りなど、趣味以上・労働未満の創作活動を支えている、フェミナイズ(女性化)する言説を探る。
栖来ひかり 著
書肆侃侃房 1600円+税 5月13日発売
台湾の人々や文化を、その生活のなかから精緻に見つめ、書き記したエッセイ集。2006年より台湾に暮らす筆者は、これまで失われていく風景や忘れられた記憶を見つめ、掘り起こしながら、台湾の魅力を伝えてきた。本書は社会、ジェンダー、日台文化比較、歴史交錯、映画・アート・本といったテーマで構成され、絵画や台湾竹工芸などアート関連のテキストも充実。重層的で複雑な豊かさに満ちた台湾への新たな視座が開かれる1冊。