【インテリアブランド名鑑】ミッドセンチュリー文化を牽引する〈ノル〉の現在。
モダンデザインのメインストリームは、20世紀半ば、第二次世界大戦の終結とともにヨーロッパからアメリカへと移り変わった。その変化を先導し、ミッドセンチュリーのデザイン文化を華やかに彩っていったブランドが〈ノル〉だ。
〈ノル〉は1938年にニューヨークで創業した家具ブランド。創業者のハンス・G・ノールはドイツ出身で、ニューヨークに移住してまもなくこのブランドを始めた。さらに1946年に結婚したフローレンス・ノールがデザインディレクター的な役割を果たし、〈ノル〉は時代を先駆けるプロダクトを盛んに発信していく。
躍進の鍵になったのは、フローレンスがアメリカ屈指のデザイン学校だったクランブルック芸術アカデミーで学んだこと。当時のクランブルックはチャールズ・イームズやエーロ・サーリネンが教師となり、ハリー・ベルトイヤはじめ有望な学生が集っていた。《チューリップチェア》をはじめとするサーリネンの名作が〈ノル〉から発表されたのは、フローレンスの人脈の賜物だった。またベルトイアの《ダイアモンドチェア》も〈ノル〉のロングセラーとなる。
第二次世界大戦後、好敵手だった〈ハーマンミラー〉とともに存在感を増す〈ノル〉だったが、1955年にはハンスが自動車事故で亡くなってしまう。ただし、その後もフローレンスのもとで〈ノル〉は継続してモダンデザインの名品を作り続けた。サーリネンに師事したウォーレン・プラットナーによる《プラットナー・コレクション》は1966年発表で、ミッドセンチュリー前期の家具に比べて優美で繊細、構造的にも手が込んでいる。またフローレンス自身も、控えめだが絶妙なバランスをそなえる家具をいくつも手がけた。〈ノル〉を彩る著名なデザイナーの家具に対し、その背景としてふさわしい家具を彼女は志向したという。