なぜ麻雀は世界で人気となったのか、その歴史と未来、「麻雀には懐の深さがある」と歴史学者
麻雀には、運と腕の両方が求められる。4人のプレイヤーで行われ、使用される牌には、いかにも中国らしい文字や絵が刻まれている。数牌(すうぱい)と呼ばれる牌に描かれている竹のような絵と円の模様は、いずれも古代中国の貨幣を表している。字牌の三元牌は古代の弓道を象徴し、花牌には「四君子」と呼ばれる梅・蘭・菊・竹が描かれている。
ベストセラーとなった『Mahjong: A Chinese Game and the Making of Modern American Culture(麻雀:中国遊戯と現代アメリカ文化の形成)』の著者で、米オレゴン大学の歴史学者であるアネリーズ・ハインツ氏によれば、麻雀には世界で40種類以上の異なる遊び方があるという。しかし、牌の素材や基本的なデザインは共通だ。
麻雀のリズムは、特にコミュニティの形成に適していると、ハインツ氏は指摘する。ポーカーゲームの場合、ゲームとゲームの間にトランプをシャッフルする時間が数秒間挟まれるだけだが、麻雀は、1回終わるごとに牌を並べ直すためにある程度時間がかかる。その間にプレイヤー同士で会話が弾み、親睦を深めることができる。
運が勝利の鍵を握る麻雀には、迷信が多い。たとえば、プレイヤーの肩を叩くのはタブーとされている。連勝に水を差すと考えられているためだ。また、負けが続いたら、トイレに立てば悪い運を流すことができる。さらに中国では、「本」と「負ける」という中国語の発音が全く同じであることから、麻雀卓に本を持ち込むことは禁じられている。そして、一巡目に「西(シー、日本では「シャー」と発音)」と書かれた牌を4人が連続して捨てると、「四」人全員に「死」が訪れると言われている。
オーストラリアのビクトリア大学で心理学の上席講師を務める大塚啓輔氏は、麻雀のギャンブル認知を研究し、興味深いことに、麻雀をする際に迷信を信じる人ほどギャンブル依存症になりやすいことを発見した。
「ポーカーと比べると、麻雀は技術よりも運に頼ることが多いゲームです。そして、その運が人の運命の基盤を成していると考える人が、麻雀のギャンブル性に引かれる傾向にあります」