鬼ケ島→富士山 「まんが日本昔ばなし」の画家、新作アニメ完成
「富士山新伝説」と題された「約束」は桃太郎伝説を元にした。女神・木花咲耶姫(このはなさくやひめ)と、生まれる前からある「約束」していた桃太郎は犬、猿、キジを家来に、「せの湖(うみ)」を渡り、鬼ケ島にいる鬼の守護神・龍鬼にきび団子を食べさせる。人を食べてきた龍鬼の罪の深さが炎の川となり溶岩流となってせの湖に流れ込んで五つの湖に変え、龍鬼のいた鬼ケ島は富士山となり、「安らかで静かな平和をつくる」という女神との約束を果たす物語だ。
前田さんは2019年に日本語、英語、スペイン語の3カ国のオリジナル絵本「約束」を自費出版し、外国人を中心に好評だったことから、オリジナルアニメ版に取り掛かった。およそ3年間で約6000枚を作画し、このうち約1000枚を展示している。
「約束」の上映時間は20分。ナレーションは富士河口湖町の「町うた」の「木の花の開く頃に」を手掛けたシンガー・ソングライターのイルカさんが担当、背景画やCG演出は「まんが日本昔ばなし」当時の仲間・知人が協力し、資金は絵本の売り上げや、クラウドファンディングで募った。
前田さんは1969年に手塚治虫が創設したアニメーション専門プロダクション「虫プロ」に入社。75年から19年間続いた「まんが日本昔ばなし」で80作品を制作し、85年の番組10周年記念・劇場長編アニメ「ごんぎつね」では監督を務めた。仕事場としている観光施設「西湖いやしの里根場(ねんば)」(富士河口湖町西湖)の古民家「見晴らし屋」でこれまで制作した作品などを常設展示している。前田さんは「『約束』では人を殺したり、殺されたりする場面はなく、なつかしい世界を次の世代に残していきたい。世界中の人に見てもらいたい」と話している。