〈イッタラ〉上級者が選ぶ、通な名作ベスト10選。
2015年、瞬く間にインテリアデザイン業界を席巻したロナン&エルワンブルレックがデザインした《ルーツ》。その完成度から〈イッタラ〉次世代の名作登場との呼び声も高かったこのベースは、ひし型の形状のガラスの厚みに強弱が付いており、光を透過すると色の濃淡がグラデーションとして美しく浮かび上がる。シンプルで繊細なフォルムゆえ、職人たちのマウスブローの技術と精度が試されるという、製作の難易度が高い点も評価したい。
フィンランドデザインのアイコン、アルヴァ・アアルトのデザインによるベース。これまでさまざまな形状や色、サイズが登場しているが、1936年に発表された幻のベースが〈イッタラ〉設立140周年の昨年、2021個の数量限定で電撃的な復刻を果たした。オリジナルを忠実に再現し、昔ながらの木型でマウスブローにより製作。揺らぐ影と造形は時を超え、ただただ美しい。4色展開のうち、まだ2色は入手可能。木型だからこそ味わえる、ガラスの美しさを。
〈イッタラ〉の中では異色なハンギングタイプのガラスオブジェ、《アテネの朝》はデザイナーのカイ・フランクがギリシャに旅した際、日曜の朝に街の教会から響く柔らかな鐘の音からインスピレーションを得て生まれた幻想的な作品。中空状のクリアガラスを熱し、空気を吹き込むことで水泡のようなフォルムが成形される。ガラス同士が不規則に連なった時の造形美はもちろん、風に揺られ、そっと触れ合う音色の美しさまで存分に堪能できる名作だ。
オイバ・トイッカが残した《バード バイ トイッカ》。フィンランドに生息する野鳥や時にはオリジナルの鳥まで、1972年の生産開始から約50年間で500羽以上ものバードが作られている。2016年に発表した《バード バイ トイッカ アンナ》は同シリーズ上、初めてのドーム型。手吹きの中空ガラスのみで仕上げられた軽やかなフォルムは、とても現代的だ。歴代のバードとは一線を画す新たな試みを、キャリアの晩年に実現させているところが熱い。