あの“オレンジのハサミ”で有名なフィンランドの〈フィスカース〉ゆかりの地にて、アート&デザイン・ビエンナーレが開催中です。
オレンジ色の持ち手のハサミでお馴染みのフィスカース。創業1649年の老舗だが、1967年に世界で初めて持ち手がプラスチックのハサミを生産したことで、世界的なメーカーに成長。ロングランのハサミはこれまで10億本以上が生産されているという。現在はガーデンやキッチン用品など幅広い製品を生産するほか、イッタラやイギリスのウェッジウッドなども傘下におく、国際企業に発展している。
フィスカースの名称は、ヘルシンキから西に約90キロ、森と湖に囲まれた「フィスカース村」に由来する。300年以上に渡りこの村でハサミなどの製造が続けられていたが、1980年代に新工場が別の場所に建てられたことで、この村の工場は閉鎖に。これに伴い、村は産業も住人も失うことになる。そこで残っていた施設を活用して村を再生しようと、1990年代からクラフト作家やデザイナー、アーティストの誘致が始まった。
程なくして木工家具で知られる〈NIKARI〉 や、陶芸家で現在は陶芸ミュージアム〈KWUM〉を運営するカリン・ウィドナスをはじめ、クリエイターやメーカーがこちらに転居を始める。アーティスト・イン・レジデンスなど各種のサポート制度もあり、現在では600人ほどが暮らす、クリエイティブでサステイナブルな「フィスカース・ビレッジ」として人気のエリアに生まれ変わっている。
2019年には地元のクリエイターの作品や招待作品などの展示を通して、地域の良さを知ってもらおうと「アート&デザイン・ビエンナーレ」が創設された。今年はその第2回目が開催され、村の各所でイベントや展示が9月4日まで行われている。メイン展示は以下になる。
フィンランドでは、2024年から30平方メートル以内の木造家屋の建設には建設許可が不要になることを受け、建築家や建築学生がデザインした実寸大のモデルハウスを展示する。フィンランド人の多くは田舎に山小屋を所有するとのことで、ビジネスとしても熱い分野だ。期間中は宿泊もできる。