村上華子「du désir de voir 写真の誕生」展、ネオン管を用いた作品をはじめ村上の新たな展開を紹介
HIRAKU Projectは、ポーラ美術振興財団の若手芸術家への助成を受けた作家を紹介する展覧会シリーズ。第13回目となる今回は、パリを拠点に活動する村上を紹介する。古典的な写真技法を扱い、見ることの根源に立ち返ろうとする村上は、2019年にアルル国際写真祭新人賞にノミネートされるなど、近年特にヨーロッパで注目される気鋭の作家。村上は制作の初期から一貫して、網膜に映る像を他者と共有するための技術とその歴史、そして目の代替物として像を焼き付けるもの、その物質性(マテリアリティ)に関心を持ち続けている。ダゲレオタイプのような古典技法による写真、100年前の未開封のガラス乾板に自然発生したイメージをとらえる作品、金属の活版を用いた作品、あるいは詩作や映像作品など、多岐にわたる村上の作品はいずれも、歴史を往来する緻密なリサーチと卓越した言語感覚に支えられている。
本展で村上は、現存する世界最古の写真を残したとされる、ニセフォール・ニエプス(1765~1833)の足どりを辿る。「写真」の発明というニエプスの輝かしい功績の裏側には、当然ながら数え切れないほどの「失敗」が存在した。本展は、村上がその歴史の陰に寄り添い、ニエプスの言葉を丁寧にひもとき、検証を重ねながら、幾多の失敗を現代に再現しようとする試み。幼少期からの夢を追い求めたニエプスのまなざしと、作家のまなざし、そして鑑賞者のまなざしが重なり合うとき、私たちの目は何を見るのだろうか。
新作を中心に構成される本展では、ネオン管を用いた作品をはじめ、村上の新たな展開を紹介する。また会期中9月25日(日)16:00~18:00には村上と、エコール・デ・ボザール教授/美術評論家のクレリア・ゼルニックによるトークイベントがアンスティチュ・フランセ東京で開催される。