『岸田内閣の対中宥和姿勢が“台湾有事誘発” 非難決議で「中国」「侵害」削除、海上保安庁法改正の行方も不明…日本全体が「柔らかい脇腹」に』への皆さんの反応まとめ
中国の「台湾侵攻」を阻止するには、日本や米国など自由主義諸国が「台湾侵攻を許さない」との強い意志を中国に示すとともに、台湾の人々が「戦っても勝てない」と敗北主義に陥らないよう、とりわけ日米が「有事の際には必ず台湾を支援する」とのメッセージを送ることが必要だ。
安倍晋三元首相が昨年12月1日、台湾のシンクタンク主催のオンライン講演で、「台湾有事は日本有事だ。すなわち日米同盟の有事でもある。この認識を習近平国家主席は断じて見誤るべきではない」と発言したのは、そういう趣旨だ。
これに中国政府は即座に反応した。華春瑩外務次官補が同日夜、垂秀夫(たるみ・ひでお)駐中国大使を呼び出し、「中国内政への乱暴な干渉だ」と抗議した。痛いところを突かれたのだろう。
これに対し、垂大使は、台湾をめぐる状況について日本にはこうした見解があることを中国として理解する必要があるとの考えを伝え、「中国側の一方的な主張については受け入れられない」と毅然(きぜん)と反論したという。
安倍氏は日本政府の関係者ではない。必要なのは、日本政府が強いメッセージを発し続けることだ。米国との連携を見せることも重要だ。
岸田文雄首相が派閥会長を務める宏池会が政権を担った宮沢喜一内閣は、自由社会の「柔らかい脇腹」となった過去がある。天安門事件で国際社会が中国に経済制裁を行った際、宥和的な姿勢を示し、求めに応じて「天皇(現・上皇)の訪中」を実現した。
これが契機となって経済制裁は解かれた。その後、中国経済は急成長した。が、中国は激しい反日教育を実施した。日本から流出した科学技術で軍事技術を発展させもした。最近開発に成功した、迎撃困難な「極超音速ミサイル」は一例だ。
岸田内閣の、中国への宥和的な姿勢も気になる。
新疆ウイグル自治区などでのジェノサイド(民族大量虐殺)へ抗議の意味で、米国や英国が決断した北京冬季五輪に政府関係者を出席させない「外交的ボイコット」に躊躇(ちゅうちょ)した。昨年末になって政府関係者の出席は見送ったが、「外交的ボイコット」の語は使っていない。日中友好議員連盟会長だった林芳正氏の外相への起用も、米国や中国にどう映るか。
国会も、ウイグルなどでの人権侵害に抗議する対中非難決議について、中国に配慮し、「中国」「侵害」「非難」の語を削る方向だ。何のための決議か。海上保安庁法改正の行方も不明。日本全体が「柔らかい脇腹」になっている。
昨年9月にフランスの軍事学校戦略研究所が発表した報告書『中国の影響力作戦』は、中国が沖縄などの独立派運動を煽り、米軍反対運動への支援、メディアを通じて米軍基地の存在を疑問視する報道を繰り返させるなどの動きがあると指摘している。名護市長選や県知事選への工作も活発。「民意」で日米の動きを妨害する意図だ。
日本が腰砕けでは、「台湾有事」はますます誘発される。
■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院法学研究科修士課程修了、政治学研究科博士後期課程研究指導認定退学。専攻は憲法学。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学国際学部教授。山本七平賞選考委員など。法務省・法制審議会民法(相続関係)部会委員、内閣官房・教育再生実行会議有識者委員、フジテレビジョン番組審議委員を務めた。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『日本国憲法とは何か』『明治憲法の思想』(PHP新書)など多数。