建築家が案内! 江戸時代を今に伝える奈良・御所まちに注目スポットが続々誕生。
奈良県中部にある人口万人の街、御所市。葛城山(かつらぎさん)と金剛山(こんごうさん)の麓に位置し、日本神話の聖地・高天原(たかまがはら)があったとも伝えられる歴史ある地域だ。〈風の森〉で知られる油長(ゆうちょう)酒造をはじめ千代酒造、葛城酒造という3つの蔵元による地酒づくりや大和野菜の栽培など、葛城山麓の土壌や伏流水を生かした農・産業が息づく土地柄でもある。その中心部「御所まち」には江戸時代以前からの町割りと “背割り下水” と呼ばれる水路、昔ながらの大型の商家がしっかりと残る。
そこに2022年、宿泊施設やレストランなどが相次いで誕生した。いずれも古い商家などの空き施設を改修したもので、地域色豊かな空間や食を楽しめる場所ばかりだ。御所まちに約15年前から拠点を構え、多くの施設改修に関わる建築家の吉村理さんにそれらのスポットを案内してもらった。
行き先は計6軒。御所まちのなかでも周囲に濠(ほり)をめぐらせた環濠集落である「西御所」と呼ばれるエリアにある。全施設がおよそ400m四方におさまるコンパクトさで、どの施設同士も歩いて5分以内でまわれるのがうれしい。
6軒のうち4軒は〈GOSE SENTO HOTEL〉という “分散型ホテル” として再生されたもの。分散型ホテルとは集落の空き家などを再生し、客室や食堂、レセプションといった機能をもたせ、1つのホテルに見立てた施設群のこと。イタリアのアルベルゴ・ディフーゾを発祥とし、国内でも東京・谷中の〈hanare〉や兵庫県の丹波篠山〈NIPPONIA〉などの先駆例があるが、〈GOSE SENTO HOTEL〉は2軒の宿泊施設と1軒のレストランに加え「銭湯」を再興するなど、地域や暮らしと観光施設との連続性が特徴だ。